日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-08] 日本地球惑星科学連合の将来に向けた大会参加者からの意見と提言

2019年5月30日(木) 13:45 〜 15:15 101 (1F)

コンビーナ:浜野 洋三(神戸大学海洋底探査センター)、田近 英一(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、隅田 育郎(金沢大学 理工研究域 地球社会基盤学系)、座長:和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、隅田 育郎

14:39 〜 14:51

[U08-05] ちょっと英語やり過ぎ違いますか?

*林 祥介1 (1.神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))

キーワード:英語化問題

英語を英語で教えるとか, 専門科目も英語で教えるとか, はては, 小学校にまで英語が導入され, 大学入試の英語試験は4技能試験とか言われるようになってしまった今日, これをリードしてきた国民大衆の英語コンプレックス, その原因となる経団連のみならず学術コミュニティーをも含む指導層の「国際」重視, これらに対する個々人の射幸心の方向性, ..., そういった社会経済文化学術的背景のもとJpGUの諸相もその例外でないのはわからんではない.

しかし, ヨーロッパ言語以外でほぼ唯一, 研究レベルまでの教育と実践を母語で行えるよう明治以降営々と努力してきた日本語空間の涵養を止めてしまうことの影響を過小評価していないだろうか? 今ある日本語言語空間やその運用力は当たり前にそこにあり自然に身につくものだと思っていいないだろうか? 母語が鍛えられていることによって, 我々はごく「自然」に広い幅と深い奥行きをもった想像力理解力を身につけることができているが, あまりに「自然」なのでそのコストと威力をなかなか前景化できない. しかるにその力は急速に衰えつつあるように危惧される. 言語は涵養しなければならず, これを使いこなすためには鍛錬が必要あることはいうまでもない.

言語の収斂(英語化)がどこまで進展するのか予想はつかない. 中国の躍進がどこぞでブレーキをかけてくれるかもしれない. しかし, 現状, このまま推移すればあと数世代ぐらいで日本語は日常語にしか使えない言語に退化していくような勢いである. 欧州言語群の多言語化とは異なり, 言語システムが大幅に違う言語間の多言語化に高いレベルで対応することは容易ではない. 思考の幅や深さを担保しようとすれば特定の言語システムに集中せざるを得ず, 言語選択段階で切り替えるような選択がなされるようになるのかもしれない. 捨てられる言語の上にいるのは嫌なので雪崩的衰退もあり得るのだろう.

英語空間に先端知識が集積される今日, これに参加寄与していくことを担保する運営システムの日英対応とその改良は望ましいし, 英語セッションを許容できる運営体制の構築も素晴らしい. しかし, 要旨が英語でなければならないとか, 資料が英語でなければならないとかいう強制ははずしてもらいたい, 日本語言語空間を涵養しこれを母語とする人々への知見提供を重視する日本語セッションを排除するのではなく許容できるようにしてもらいたい, と強く思う.

ちなみに英語タイトルと予稿本文には生 google 翻訳を置いてみた. AIがこの問題への関与にはまだ少々時間が必要なようだ.