JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG57] 北極域の科学

コンビーナ:庭野 匡思(気象研究所)、鄭 峻介(北海道大学 北極域研究センター)、中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、小野 純(東京大学大気海洋研究所)

[ACG57-02] 北極温暖化に伴うユーラシア陸面過程の気候メモリ効果

*中村 哲1山崎 孝治1佐藤 友徳1浮田 甚郎2 (1.北海道大学大学院地球環境科学研究院、2.新潟大学大学院自然科学研究科)

キーワード:北極温暖化、北極振動、北極海氷、気候メモリ

北極域は、ここ数十年でもっとも温暖化が進んだ地域であるが、一方で、北極温暖化の遠隔影響として、日本を含む中緯度域での寒波の増大といった気候変化があることも示唆される。このような北極の温暖化と中緯度の寒冷化の関係については、過去数十年の観測結果では、強い相関関係があることがわかっているが、気候シミュレーションによる再現性には大きな不確実性がある。そのような不確実性をもたらす要因として、大気循環よりもゆっくりと変動する陸域との相互作用に着目した。本研究(Nakamura et al., 2019, Nature Communications)では、大気大循環モデルを用いたシミュレーションにおいて陸域のメモリ効果を抽出する方法を開発し、北極海の海氷減少時の気候再現実験に適応した。シミュレーションでは負の北極振動的なパターンが現れ、観測された気候変化をよく再現する。この時、ユーラシア大陸の陸域では、海氷減少に伴う循環場の変化で生じた寒冷な偏差が積雪および土壌温度に記憶されることで、翌冬の寒冷な偏差を2倍に強化し、同時に起こる大気循環による熱輸送は北極域の昇温を20%強化することがわかった。この結果は、北極と中緯度の長期的な気候変動を考える上で、陸面過程が重要な役割を果たすことを強く示唆する。