JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)

[G02-P01] 「四面会議システム法(YSM)」―多文化協働社会における被災者ニーズを考える―

*糸谷 夏実1田原  道崇1濱田 俊介1 (1.応用地質株式会社)

キーワード:四面会議システム法、多文化協働社会、災害

近年、日本ではムスリム留学生の増加が注目されている。在日留学生数は、平成30年5月1日時点で29万8900人にのぼり、イスラム教を主な宗教とする国からの留学生は1万人を超える(日本学生支援機構, 2019)。現代の日本社会において、宗教的マイノリティとしての立場を互いに理解し、文化的宗教的多様性を尊重できる環境を整備していく必要がある。しかしながら、行政の防災対策において、災害時ムスリムがどのような準備や行動・注意をすればよいかまで詳細に議論されていない。

 小さなコミュニティでの災害時の行動計画において重要なのは、「密着性」であり、多様な価値観の中で「課題の明確化と共有化」をいかにして推進していくかである。本研究では、「課題の明確化と共有化」に着目し、知識の行動化形成過程の構造化を提案する四面会議システム法(YSM)を用いた。この四面会議システム手法は、住民による行動計画づくりのための支援手法の1つとして住民と防災専門家が協働するワークショップで適用されている(岡田他、2005)。四面会議システム法は、ゴール設定を行い、時間軸を3段階(例:3日後、1週間後、1年後)に分け、それぞれの時間軸でのアクションプランを出していく。本研究では、時間軸を除いた四面会議システム法を導入し、ムスリムと日本人が協働して、課題テーマを解決する方向性に応用していった。

 「課題の明確化」を把握するために、東日本大震災の被災体験者(バングラデシュ2名)からインタビュー調査を行った。インタビュー調査の結果、「ムスリムが避難所生活をイメージできていないこと」が強調された。この四面会議図の作成により、ムスリムの避難所生活に必要なアクションや物を具体化していくことを目的とした。課題テーマを「ムスリムが避難所で快適に過ごすためには」と設定し、日本人とムスリム協働で四面会議図を作成した。

 本研究で適用した四面会議システム手法は、課題テーマに必要なアクション(行動やもの)や準備しておくべきアクション(行動やもの)を4つの面からアプローチして考える。4つの面は、「組織・お金(management)」、「情報(information)」、「人的資源(Soft Logistics)」、「物的資源(Hard Logistics)」で構成される。それぞれ1面ずつ2人(ムスリムと日本人)で担当し、アクションを出していく中で、課題テーマに対する解決策を明確化かつ共有していった。

 ひとつの課題に向けて、ムスリムと日本人で協働しながら、多様な人々が参加することで、解決アクションの枠が流動的なものとなり、広がり、多様性が生きる防災・減災を展開することができる。この流動的な枠を取り入れるために、四面会議システム法は有効な手法であり、現代社会に沿った行動計画を提案できると考えられる。