JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、丹羽 淑博(東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センター)

[G03-03] 防災・地理教育支援コンテンツを活用した授業実践事例から見る防災意識の向上

*栗栖 悠貴1河西 貴史1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:防災教育、防災意識、授業実践、ハザードマップ

近年頻発する自然災害に備え,命を守る行動をとるためにはハザードマップが重要であり,防災基本計画においてハザードマップを活用した災害危険性の周知を図ることとされている.しかし,ハザードマップを作成しても,その見方などを分かりやすく解説するコンテンツを提供している市町村は少ないため,地域住民のハザードマップを活用した災害リスクの理解促進や防災意識の向上に課題がある.そのため,国土地理院は,土地の高低差や土地の成り立ちを学び,ハザードマップを段階的に理解して頂くためのコンテンツを作成した.本報告では,作成した防災・地理教育支援コンテンツを活用した出前授業の実践事例から,生徒の防災意識にどのような効果があったかについて報告する.

授業実践で用いた防災・地理教育支援コンテンツには,次の特徴がある.一つ目は,キャラクターが対話型でストーリーを展開する点である.ハザードマップを読み解く上で重要なポイントについて,キャラクターが疑問を投げかけることで,生徒が飽きずに考えながら学習できるような工夫をした.二つ目は,ハザードマップを理解するために思考過程を段階的に整理した点である.まずは,各災害がどのような場所で発生しやすいのかを把握し,次に表示されている災害リスクの想定を理解する流れで段階的に学ぶことができるよう工夫している.その後,災害リスクの違いと土地の成り立ちをふまえて避難先を検討し,最後に広域な複合災害への備えを考えることができるよう誘導している.三つ目は,災害リスクを身近に感じるための教科横断的な内容という点である.大雨の際に情報発信される時間雨量について,具体的な数値から災害の危険性を実感するために,コンテンツでは数学を使って雨の体積を身近なものに例えている.さらに,最終的に流域の概念を通じて大雨の危険性の認識につなげることができるよう工夫した.

次に,防災・地理教育支援コンテンツの活用がもたらした生徒の防災意識の変化について,授業実践で対象とした中学一年生に,授業後アンケート調査を実施した.その中で,コンテンツの理解度やコンテンツを活用した授業による防災意識の変化に関する項目において,90%以上の生徒がコンテンツを理解し,防災意識向上につながったと回答した.家族への展開や異なる災害種別に対する興味の拡大について回答した生徒もおり,防災・地理教育支援コンテンツの活用が防災意識の向上に有効である一面が垣間見えた.
本コンテンツは,地理教育の道具箱(https://www.gsi.go.jp/CHIRIKYOUIKU/index.html)にて情報発信しており,誰でも活用することができる.今後は,様々な機会を通じてコンテンツの存在を情報発信していくことで防災意識の向上を支援していく.