JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG28] 原子力と地球惑星科学

コンビーナ:笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、幡谷 竜太(一般財団法人 電力中央研究所)、竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

[HCG28-05] 沿岸部における3次元地質モデルの構築

*古林 慧一1羽根 幸司2丸井 敦尚3天野 大和1田部井 和人2森川 誠司2升本 一彦2 (1.株式会社地層科学研究所、2.鹿島建設株式会社、3.国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

キーワード:高レベル放射性廃棄物、地層処分、沿岸部、3次元地質モデル、Conceptual Model、Site Description Model

原子力発電に伴う核のゴミ,すなわち高レベル放射性廃棄物は,地層処分により地下深部に埋設・隔離することで国際的に一致した理解を得ている.わが国では動力炉・核燃料開発事業団(現在の日本原子力研究開発機構)により1976年ごろから高レベル放射性廃棄物に関する処分研究が始まり,1999年の第2次レポート(通称)で地層処分に技術的信頼性のあることが報告された.2002年から2020年現在,文献調査地域を公募中である.
地層処分の安全性を説明し,事業に対するステークホルダーからの信頼を確立するために,事業の各段階(文献調査段階,概要調査段階,精密調査段階)を経て進化する地質モデルの構築が必要である.文献調査段階では,公的機関の発行した地形図や地質図,誰でも入手できる既存の文献資料から,Conceptual Model(概念モデル)を構築する.概要調査段階では,概要調査で得られた新たな地質情報や温度分布(Thermal:T),水理構造(Hydarulic:H),応力(Mechanical:M),化学的特性(Chemical:C)(以下,THMC)などの情報を加えたSite Description Model(詳細モデル)を構築する.
今回我々は,来るべき事業の開始に備え,沿岸域である北海道幌延地区を対象に概念モデルと詳細モデルの構築を試行した.モデルは南北に約50km,東西に約80km(陸域約20km,海域約60km)の矩形領域を有する.概念モデルの構築には地質調査総合センター発行の地質図や,海上保安庁発行の海底地形データ等を用いた.詳細モデルにおいては,「全国地熱ポテンシャルマップ(産総研,2009)」や「沿岸域塩淡境界・断層評価技術高度化開発成果報告書(産総研,2008)」,「幌延深地層研究計画書で得られた地下水の水質データ(2011年度~2013年度)(笹本ほか,2014)」などを参考にTHMCに係るデータを追加した.
沿岸域の地質モデルを構築するうえで,陸域に比べデータ量の少ない海域ではモデルの不確実性が大きくなってしまう.より詳細・精密な地質モデルに進化する際,その不確実性を低減させるような調査が必要である.不確実性を含む沿岸域の地質モデルは,調査の種類や場所や量など,調査計画を考える際の一助になる.