JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] Natural hazard impacts on human society, economics and technological systems

コンビーナ:ELENA PETROVA(Lomonosov Moscow State University, Faculty of Geography)、松島 肇(北海道大学大学院農学研究院)

[HDS10-P07] 阿蘇くじゅう国立公園における草原保全ボランティアによる熊本地震からの復興

★招待講演

*MACHIDA マチダ1 (1.東京農業大学)

キーワード:熊本地震、阿蘇、復興

阿蘇地域は、2016年4月14日及び4月16日に発生した熊本地震(マグニチュード7.3)により、24名の尊い人命が奪われ、土砂による地域分断や家屋の損壊等甚大な被害を受けた.農業被害としては、草原の亀裂や土砂流入、牛舎の損壊により、畜産業の継続が難しかった。しかし、草原再生にかかわる阿蘇グリーンストックや阿蘇草原再生協議会の草原保全ボランティアからの支援により短い期間で地域住民が災害を乗り切ることができた。本研究では、草原保全のボランティアによる震災復興のプロセスを、生存確保の時期(災害から10日間)、生活確保の時期(災害後からひと月)、生計の確保の時期(災害時から三か月)、その後、事業の再開の目途をつける生業確保の時期の時系列で明らかにした。調査方法は、阿蘇グリーンストックと阿蘇草原再生協議へのヒアリング調査により実地した。ヒアリング項目は、熊本地震後の取組と実施時期、活動への支援、情報発信方法を設けた。ヒアリング調査は2017年5月4日と9月12日と9月13日、2018年9月8日に実施した。加えて、阿蘇グリーンストックと阿蘇草原再生協議会が発行している機関紙から震災復興に関連する文献調査を行った。阿蘇草原再生協議会では、震災後すぐに牧野組合への災害支援に対する緊急アンケートを行った。震災約2か月後の6月15日に寸断された牧道を復旧した(西原村)、6月17日に、被災した水飲み場、餌場、牧柵の整備(西原村)を行った。震災3か月後7月19日に南阿蘇村の牧野の水槽を新設した。さらに、震災翌年は地割れした草原の畜産農家への野焼き再開支援を行った。阿蘇グリーンストックは、熊本地震発生3日後の2016年4月19日に牧野の被害状況を調査した。 地震発生11日後の2016年4月27日には、野焼きボランティアの会員に対して牧野への募金を募集した。募金は4か月間で約280万円集まった。阿蘇グリーンストックは、草原の亀裂により野焼きが困難な状況となった牧野の野焼き再開支援や牧道整備を行った。観光・交流による創造的復興の取り組みは、2016年10月から福岡発と熊本発で輪地切(野焼きの防火帯作り)と、赤牛バーベキューや阿蘇の温泉を楽しむ観光ツアーを企画した。119名の都市住民が参加した。以上のことから、震災前の草原保全のボランティア活動による協力関係が、熊本地震直後の畜産農家への迅速な生活再建につながった。さらに、震災半年後には震災支援活動は観光等の交流事業へと展開した。