[HGM03-P07] 詳細なDEMデータを活用した新潟県信濃川流域に広がる段丘面の地形解析
キーワード:地形解析、航空レーザデータ、信濃川流域、河成段丘、Arc GIS
新潟県信濃川流域は古くから活褶曲地帯として知られ、流域沿いの河成段丘に上流や山側への異常傾斜をもたらしている(池辺1942など)。Ota(1969)では山本山周辺に断層があることを報告し、それは後に活褶曲地帯に存在する断層flexural-slip faultであることが示唆されている。また、2004年に発生した中越地震では近くの東山背斜付近で1m程度の隆起が報告されており(小長井ほか,2007)、以上より当地域では地形・地質学的、および測地学的な研究が行われている。
今回信濃川と魚野川の合流部付近の段丘面において段丘区分を行い、同時にDEM解析にて特徴的な地形面の可視化及び地形発達に関して考察した。本研究で使用したDEMデータは、国土地理院提供の航空レーザ点群データ(計測時期:2005年5月)を使用し、点群データをHarris社のENVI LiDARを用いて1mDEMを作成した。その後の解析にはArcGIS10.7を用いて地形解析を行った。また、異なる時期のデータ(計測時期:2011年11月)もあり、水平変位による誤差が含まれていることに留意し、DEMの差分を計算しその値を6年間での侵食量として算出した。
段丘区分にあたっては、小荒井ほか(2012)等の先行研究を参考に、米軍写真を用いた写真判読やDEMのコンターを読み取って区分した。昨年度に内ヶ巻地区において作成の段丘区分結果をもとに当地域の段丘面をM1~M4面、及びL1~L11面に区分した。地形解析では、戸田(2014)を参考にArc GISを用いて微地形図、及び水文解析ツールを用いた水系網図や分水界図を作成した。微地形図ではOta(1969)などで報告された断層や段丘崖が区分された。水文解析ツールを用いた解析では、異常傾斜に沿った水系網が形成されており、これを段丘面各面ごとに行うことにより詳細な特徴を可視化することが期待できる。
続いて、侵食量を算出したところ、おおむね攻撃斜面側での侵食および砂州の高まりなどが明瞭に表れた。中でも、山本山断層近くの岩沢橋近くの攻撃斜面での侵食が顕著に表れた。柳沢ほか(1986)にてまとめられている地質図をGIS上で重ね合わせると、魚沼層と和南津層との境界付近の魚沼層よりに侵食箇所が集中していた。当該地域の地質図では魚沼層はシルト質、和南津層は砂質であるため、地質による侵食抵抗力の違いが河道形成に影響を及ぼした可能性がある。
今後、現地調査などを行うことで地質境界部においての基盤と侵食の関係性や隆起量について、更なる議論の余地があると考えられる。地形解析についても水文解析以外のツールも使用して図を作成し地形発達の考察を進めていく予定である。
参考文献
池辺展生 (1942)越後油田褶曲構造の現世まで行はれていることに就いて (演旨).石油技協誌,10,108-109.
Ota, Y. (1969): Crustal movements in the late Quaternary considered from the deformed terrace plains in Northeastern Japan. Japan Jour Geol Geogr, 40, (2-4), 41-61.
小荒井衛 (2012)活褶曲地帯における地震に伴う斜面変動と地形発達過程に関する研究. 科研研究費補助金 成果報告書
小長井一男ほか(2007)活褶曲地帯における防災シンポジウム講演概要集,土木学会,4-14
戸田健一郎 (2014)曲率と傾斜による立体図法 (CS立体図)を用いた地形判読. 森林立地学会 56,75-79.
柳沢幸夫ほか(1986):小千谷地域の地質,地域地質研究報告 1:50,000 地質図幅,新潟(7) 50号
今回信濃川と魚野川の合流部付近の段丘面において段丘区分を行い、同時にDEM解析にて特徴的な地形面の可視化及び地形発達に関して考察した。本研究で使用したDEMデータは、国土地理院提供の航空レーザ点群データ(計測時期:2005年5月)を使用し、点群データをHarris社のENVI LiDARを用いて1mDEMを作成した。その後の解析にはArcGIS10.7を用いて地形解析を行った。また、異なる時期のデータ(計測時期:2011年11月)もあり、水平変位による誤差が含まれていることに留意し、DEMの差分を計算しその値を6年間での侵食量として算出した。
段丘区分にあたっては、小荒井ほか(2012)等の先行研究を参考に、米軍写真を用いた写真判読やDEMのコンターを読み取って区分した。昨年度に内ヶ巻地区において作成の段丘区分結果をもとに当地域の段丘面をM1~M4面、及びL1~L11面に区分した。地形解析では、戸田(2014)を参考にArc GISを用いて微地形図、及び水文解析ツールを用いた水系網図や分水界図を作成した。微地形図ではOta(1969)などで報告された断層や段丘崖が区分された。水文解析ツールを用いた解析では、異常傾斜に沿った水系網が形成されており、これを段丘面各面ごとに行うことにより詳細な特徴を可視化することが期待できる。
続いて、侵食量を算出したところ、おおむね攻撃斜面側での侵食および砂州の高まりなどが明瞭に表れた。中でも、山本山断層近くの岩沢橋近くの攻撃斜面での侵食が顕著に表れた。柳沢ほか(1986)にてまとめられている地質図をGIS上で重ね合わせると、魚沼層と和南津層との境界付近の魚沼層よりに侵食箇所が集中していた。当該地域の地質図では魚沼層はシルト質、和南津層は砂質であるため、地質による侵食抵抗力の違いが河道形成に影響を及ぼした可能性がある。
今後、現地調査などを行うことで地質境界部においての基盤と侵食の関係性や隆起量について、更なる議論の余地があると考えられる。地形解析についても水文解析以外のツールも使用して図を作成し地形発達の考察を進めていく予定である。
参考文献
池辺展生 (1942)越後油田褶曲構造の現世まで行はれていることに就いて (演旨).石油技協誌,10,108-109.
Ota, Y. (1969): Crustal movements in the late Quaternary considered from the deformed terrace plains in Northeastern Japan. Japan Jour Geol Geogr, 40, (2-4), 41-61.
小荒井衛 (2012)活褶曲地帯における地震に伴う斜面変動と地形発達過程に関する研究. 科研研究費補助金 成果報告書
小長井一男ほか(2007)活褶曲地帯における防災シンポジウム講演概要集,土木学会,4-14
戸田健一郎 (2014)曲率と傾斜による立体図法 (CS立体図)を用いた地形判読. 森林立地学会 56,75-79.
柳沢幸夫ほか(1986):小千谷地域の地質,地域地質研究報告 1:50,000 地質図幅,新潟(7) 50号