JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC07] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(東京大学)

[HSC07-18] CO2ハイドレートを利用したCO2貯留の適地探索

*安田 尚登1佐藤 徹2鳥羽瀬 孝臣3 (1.高知大学海洋コア総合研究センター、2.東京大学海洋技術環境学専攻、3.電源開発株式会社)

キーワード:CO2地中貯留、CO2ハイドレート、海盆、浸透率

我が国のエネルギー事情を鑑みると、当面、化石燃料を使用した発電は避けて通ることはできない。一方で、二酸化炭素の大気中への排出を削減もしくは将来的にゼロにすることが求められているため、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は不可欠な技術になる。日本では陸域の利用が難しいため、海域での地中貯留技術の開発が必要となる。
地中貯留で一般的なのは帯水層貯留である。本方法は水・ガスを通さない極細粒層をキャップロックとし、その地質構造を利用したCO2地中貯留で、苫小牧沖で実証試験が行われている。ただ、帯水層貯留に適した場は、地質構造上、日本近海のどこにでも存在するものではない可能性があり、探索するには多くの時間と労力を要すると考えられる。
地中貯留の可能性を広げる手法の一つとして、CO2ハイドレートをシール層とする貯留法(CO2ハイドレート貯留)の開発がある。CO2ハイドレート貯留では、まず、海底下でシール層となるCO2ハイドレートを生成する。CO2ハイドレートは、メタンハイドレートと比べると、より低温側で生成するため、海底温度は低い方がより安全にシール層を形成できる。それが安定的に存在できる条件を確認することが最も重要である。
その条件下で、貯留に最適な場や海域を探索することになるが、応用として、これまでのメタンハイドレート生成場の知見を利用することとした。海洋地質学的条件に適う海盆は、日本周辺海域には多く存在し、CO2ハイドレートをシール層とする地中貯留が可能となるはずである。ただ、一定の量的規模をより安全・安定に貯留するためには、海底温度、地温勾配に加え、地層の厚さ、水平的な広がり、堆積物の種類、堆積物粒度(孔隙率、浸透率)などを詳細に検討する必要がある。中でも、浸透率は極めて重要な要素で、その観点から、続成作用の進んだ古い地層を避けるべきである。地層年代としては、せいぜい、中新世後期以降、鮮新世や更新世の地層を対象にする。
一方、安全面を考慮して回避されなければならない場の設定も必要である。その条件は、まだ十分ではないが、想定されるものとして、1)メタンハイドレート胚胎海域、2)活断層帯などが挙げられる。1)CO2ハイドレートの生成は、発熱反応であるため、MHと重複している場では、安定に存在しているMHを分解させることが懸念される。西南日本の太平洋岸には、多くのBSRが確認され、メタンハイドレートが胚胎している可能性がある。2)次に、活断層に関して、海盆の縁辺には、活断層が存在することが多い。断層が海盆形成に役割を果たしていることもあり、海盆下に広くCO2を貯留した場合、活断層の活動(地震)による影響は受けないのか、また、逆に活断層へ働きかけるような影響を及ぼすことはないのか、など検討や実験を行う必要があろう。