[HSC07-P02] 真三軸透水試験によるOtway地域の堆積岩の断層形成に伴う透水特性の変化
キーワード:断層、透水係数
地下深部において断層を形成もしくは再活動させるトリガーとして間隙水圧の上昇,テクトニック応力の増加などが挙げられる.新たに形成された断層や再活動した既存断層は,CCSの場合では,貯留した二酸化炭素を地表へと移動させるための通路となり得る可能性がある.このような断層運動に伴う流体の移動特性は二酸化炭素回収貯留(CCS: Carbon Capture and Storage)の実行可能性を考える上で重要なものとなる.しかしながら,断層の形成に伴う透水特性の変化に関しての報告事例は,実験の困難さもあり少ないのが現状である.本研究では,断層の形成に伴う透水係数の変化を明らかにするために,真三軸応力下で破壊を進行させつつ断層面に平行な方向での透水係数の測定を行った.また,断層面を跨ぐ方向のP波速度も同時に測定し,断層の発達に伴う透水係数の変化と供にP波速度変化の測定を行った.実験にはオーストラリア・Otway堆積盆から採取された砂岩,シルト岩,泥岩を用いた.その結果,岩種ごとで断層の形成に伴う透水係数の変化は異なっており,砂岩では母岩部の透水係数が高いことから断層が形成されても透水係数の変化は小さいが,シルト岩や泥岩はガウジを伴う断層が形成されるものの,母岩部と比べ高い透水係数となる破砕帯を伴うため,試料の透水係数としては初期状態と比べ透水係数は大きくなっている.このことから,断層の形成に伴いガウジが発達したとしていても流体移動は破砕帯を通じて断層面に平行な方向に起こりやすくなると考えられる.また,シルト岩試料においては実験終了後の供試体観察からカーボネト層での滑りが確認された.このことは,カーボネイト層の摩擦係数が極端に低いことからせん断破壊が起こる前に層内もしくは層境界で滑りを引き起こしている可能性を示唆している.