JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 浅部物理探査が目指す新しい展開

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、井上 敬資(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

[HTT18-05] 2次元・3次元比抵抗トモグラフィを用いた薬液改良地盤の性能評価方法の検討

*櫻井 健1高野 大樹2高橋 英紀2竹花 和浩3長谷川 信介1山下 善弘1 (1.応用地質株式会社、2.港湾空港技術研究所、3.株式会社 ジオデザイン)

キーワード:比抵抗トモグラフィ、薬液改良、模型実験

緩い砂地盤の液状化対策として薬液注入による地盤改良が一般的に行われている。薬液注入工の事後調査では、試料採取による改良土の一軸圧縮強さを用いて評価する場合が多いが、地盤改良が広範囲にわたって行われた場合,地盤改良部で再び多くの削孔を行うことは,経済性および改良地盤の機能性を考えると現実的ではない。そのため、非破壊の物理探査を応用した品質・出来形の確認手法の開発が求められている。

比抵抗トモグラフィは、ボーリング孔を利用して対象を取り囲むように電極を配置し地盤の比抵抗を測定する手法で、地表からの調査よりも高い精度で地盤を可視化する技術である。地盤改良前後で劇的に比抵抗が変化するため、比抵抗トモグラフィは地盤改良効果の評価に有効と考えられている。しかし、測定に複数のボーリング孔が必要なこともあり、地盤改良の事後調査でまだあまり使われていない。そこで我々は、比抵抗トモグラフィを応用した薬液改良地盤の性能評価方法を開発するために、小規模模型実験を通じて、実現可能で最適な測定方法・解析方法の検討を行った。

小規模実験を実施する前に、まず数値シミュレーションを用いて、最適なボーリング孔・電極配置を検討した。数値シミュレーションより、改良部になるべく近い位置にボーリング孔があることが望ましいこと、ボーリングの本数が多いほど高い精度で改良部を把握できることを確認した。多数のボーリング孔を施工後に掘削することは好ましくないため、薬液注入で利用する注入孔をそのまま比抵抗トモグラフィで利用することを考えた。このアイデアを使うことで、比抵抗トモグラフィにかかる測定経費を大きく削減することが期待できる。

数値シミュレーションの結果を参考にして、改良体を模擬した複数の小規模模型を製作した。模型製作は,直径φ600mm,高さ400mmの塩ビ製の水槽を用い、飯豊珪砂7号を充填した。事前に作成した改良体ブロックを任意の形状で積み上げることで改良地盤を模擬した。また、比抵抗トモグラフィ用の電極(電極間隔2cm)を、ちょうど注入管のように改良体ブロックを貫くように配置して、調査対象部分を電極で取り囲むこととした。

2次元比抵抗トモグラフィの測定を、改良体のある断面・改良体のない断面で実施し、その比抵抗変化を改良前後の比抵抗の変化と考えることとした。比抵抗が低下した部分は、改良体ブロックを配置した部分によく対応することが分かった。

実際の地盤改良工事現場には、対象となる改良体の周りには別の改良体がある場合もあり、3次元構造を考慮する必要がある。もし2次元測定・2次元解析を適用してしまうと実際とは異なる結果が求められることとなる。そこで、我々は試験的に3次元比抵抗トモグラフィを適用し、3次元解析の効果を検証した。その結果、2次元探査よりも改良体の境界をより鮮明に把握できることが分かった。現在、3次元の測定・解析は2次元探査に比べて非常に時間がかかるため、3次元探査を実用化するためにもより短時間での測定・解析ができるような開発が必要である。