JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI40] 計算科学による惑星形成・進化・環境変動研究の新展開

コンビーナ:林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、小河 正基(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、井田 茂(東京工業大学地球生命研究所)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

[MGI40-07] P3T法を用いた惑星系形成のN体計算コードGPLUMの開発

*石城 陽太1,2小南 淳子牧野 淳一郎3,4藤本 正樹2岩澤 全規4 (1.東京大学、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所、3.神戸大学、4.理化学研究所 計算科学研究機構)

キーワード:N体計算、惑星系形成論

一般に,惑星系は,中心星を取り巻く原始惑星系円盤から形成したと考えられている.固体惑星やガス惑星のコアは,原始惑星系円盤内でkmサイズの天体(微惑星)の集積により形成したとされている.微惑星の集積過程は,主に微惑星系の重力多体計算(N体計算)によって議論されている.しかし,N体計算の粒子数の制約により,現在の多くのN体計算は,完全合体のような簡単な衝突モデルや,惑星系円盤の動径方向に狭い領域によるものである.より現実的な衝突モデル,動径方向に広い領域による,十分な粒子数のN体計算による研究はあまり行われておらず,汎惑星系形成論となるモデルは未だ構築されていない.
本研究では,Particle-particle Particle-tree 法を用いた新しいN体計算コードGPLUMを開発した.GPLUMでは,カットオフ半径より近距離の粒子間の重力相互作用を4次エルミート法で計算し,それより遠距離の粒子間重力相互作用をツリー法を用いて計算する.従来のP3T法を用いたコードでは,全ての粒子について同じカットオフ半径を用いているため,系内の粒子について質量比が大きくつくと計算速度が低下するという問題がある.GPLUMでは,カットオフ半径を粒子間の相互作用ごとに質量と軌道長半径に基づいて定める新たなアルゴリスムを実装することで,従来のP3T法コードの問題点を解決している.
GPLUMの性能は,従来のP3T法コードと比較して,大きな質量比のついた質量分布を持つ粒子系のシミュレーションに対しては大幅に改善される. GPLUMによって,N体計算で~106-107粒子を扱うことが可能となり,これまでN体計算で扱うことができなかった広範囲,高解像度のN体計算を行うことができる.さらに,計算コストが向上することで,N体計算によるパラメータサーベイなど,新たな議論も可能となることが期待される.