[MIS01-P01] 色丹島のテフラと津波堆積物:2019年調査の概要
キーワード:色丹島、津波堆積物、テフラ
千島海溝に沿う十勝沖,根室沖から色丹島沖及び択捉島沖にかけての領域は,北海道の津波堆積物の分布を根拠に超巨大地震が発生する確率が高いと評価されている(地震調査委員会,2017).この長期評価の精度を高めるためには,北方領土においても古地震や古津波のデータを蓄積する必要がある.北方領土では2015年から毎年,日本とロシアの研究者5-7名が現地に集結して10日間程度の情報交換と津波堆積物調査を実施する事業が関係機関の協力を得て続けられている.2015-2018年の国後島調査に引き続き,2019年には7月5日から15日,色丹島の5地域の沿岸低地(ホロベツ,穴澗,又古丹,チボイ,イネモシリ)の32地点においてテフラと津波堆積物の分布調査を実施した.その結果,イネモシリで最大6層の津波堆積物候補と最大4層の火山灰を内陸約530mまで確認した.またホロベツで1層の津波堆積物候補と最大3層の火山灰を内陸約350mまで確認した.色丹島では島の全域において,北海道の火山起源の火山灰である駒ヶ岳c1(1856年),樽前a(1739年),駒ヶ岳c2(1694年),樽前b(1667年),摩周b(約900年前),樽前c(約2700年前)が分布していることが報告されている(Razzhigaeva et al., 2016).これらの火山灰層を鍵層として,国後島や北海道の津波堆積物と対比させることができる.また,色丹島には,国後島のような広大な湿原は存在せず,谷地形の斜面に発達した泥炭地が多い.こうした斜面では斜面崩壊堆積物や小規模な河川の洪水堆積物と津波堆積物の見分けは難しく,詳細な分布調査が必要なこともわかった.