[MIS01-P03] 大型植物化石から復元された古堆積環境と津波堆積物の層相の関係
キーワード:津波堆積物、海溝型地震、対比
測線上で津波堆積物を対比し,その分布範囲を推定することは津波の規模推定を行う上で重要である.津波堆積物の対比は,その層相や堆積物中から得られた年代指標(火山灰層,14C年代等)を基に実施されることが多い.しかしながら,津波堆積物の層相は微地形など形成地点の堆積環境による影響を受ける.そのため,ごく近傍から得られた試料同士でも津波堆積物の層相が異なり,対比が困難な場合もある.そこで本研究では,北海道浜中町の霧多布湿原において,湿原内の約40 m2の範囲で得られた津波堆積物の層相の差異について津波堆積物の堆積環境から考察した.対象とした津波堆積物は17世紀,12~13世紀の巨大津波で形成されたと推定されているもので,それらは既に火山灰層から対比されている.堆積環境については,津波堆積物を挟在する泥炭層中から得られた大型植物化石を用いて復元した.その結果,葦等の生育する水場環境で形成された津波堆積物の場合,比較的乾燥した湿地帯で形成された津波堆積物に比べて層厚が大きかった.またそのような水場で形成した津波堆積物の色調は青みがかっており,ラミナや級化等の堆積構造も明瞭に保存されていた.以上のように,津波堆積物の層厚や堆積構造等は堆積環境による影響を受けるため,堆積環境を議論せず単純に層相のみで津波堆積物の対比を行うことは避けるべきである.こうした知見は,湿地帯における津波堆積物の対比の一助になると考えられる.