JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS03] Structure and deformation in the overlying plate due to subduction and related feedbacks

コンビーナ:佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、David A Okaya(University of Southern California)、Eh Tan(Institute of Earth Sciences, Academia Sinica)、石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院)

[MIS03-06] プレート間巨大地震の固着による内陸震源断層への応力蓄積:南海トラフと千島海溝

*橋間 昭徳1佐藤 比呂志1石山 達也1Freed Andrew2Becker Thorsten3 (1.東京大学地震研究所、2.パーデュー大学、3.テキサス大学オースティン校)

キーワード:応力蓄積、南海トラフ、千島海溝、震源断層、有限要素法、地殻変動

2011年東北沖地震前後の地震活動に見られるように、プレート内部の応力蓄積状況はプレート境界プロセス、特に巨大地震の震源域のカップリングによって支配されている。そのため、プレート内地震の発生確率も数十年スケールで変わりうる。このような比較的短期の変化は、数千年スケールでの地震活動履歴をもとに算出する確率論的な地震発生の長期予測には含まれていない。

本研究では、プレート境界プロセスによるプレート内部の応力蓄積状態を決定論的アプローチで求め、プレート内地震の発生との整合性を検証する。モデルの拘束には、日本列島域の稠密な測地観測網によるデータを用いることが可能である。この方法を南海トラフと千島海溝に適用した例を示す。

著者らは日本列島域の三次元有限要素モデル(FEM)を構築した。モデルはユーラシア、太平洋、フィリピン海プレートからなり、プレート境界形状は地震分布にもとづく既存研究により定めた。プレート境界面の80 km以浅を700の小断層面に分割し、各断層面のすべり応答を計算した。また、長期間のプレート境界プロセスを扱うためにアセノスフェアの粘弾性を取り入れている。プレート内の震源断層モデルとして、地震調査委員会による矩形断層モデルを改訂し、新たに近年の地震探査による海域の震源断層モデルを追加した。

このモデルを用いて、測地データのインバージョンにより、プレート境界面におけるすべり欠損分布(プレート間固着)を求め、プレート間固着によって震源断層に蓄積されるクーロン応力を求める。南海トラフに関しては、固着によって2016年Mw7.2熊本地震やその他西南日本のM7級地震の震源断層でクーロン応力が正となった。また千島海溝については、2018年Mw6.7北海道胆振地震でクーロン応力が正となった。これらの結果は、巨大海溝地震の地震間におけるプレート内地震の地震発生は、プレート間固着による応力蓄積が進行している震源断層において応力解放過程として起こるということを示唆している。したがって震源断層における応力蓄積レートを求めることの重要性を示している。