[MIS07-P10] 地球外試料中の粘土鉱物に対する新たな鉱物学的キャラクタリゼーション法の開発
キーワード:粘土鉱物、STXM、XAFS、隕石
火星やC型小惑星といった地球外天体には水がかつて存在していたとされている(Vaniman et al, 2014;Noguchi et al., 2002)が、それらの天体にどのような水環境が存在したかを推定するためには、対象天体上で生じる化学反応や物質循環を理解する必要がある。地球外天体で見つかっている水の痕跡の一つとして、含水鉱物と呼ばれる鉱物があるが、この鉱物は過去に存在した水の化学状態やそれに関連する反応を記録している。
地球外天体から飛来する隕石試料には、含水鉱物の一種である粘土鉱物と呼ばれる微細なケイ酸塩鉱物が含まれていることがある(Kebukawa and Nakazima., 2008)。粘土鉱物とは層状の結晶構造を持つケイ酸塩鉱物であり、主要構成元素はSi, Al, Fe, Mgである。四面体シートと八面体シートが1:1もしくは2:1で重なったシートが層状に積み重なった構造となっており、これらシートの重なり方や構成元素の含有量や配位位置によってこちらのように様々な種類が存在する。粘土鉱物の構造や組成の差異は生成環境に関連するため、本研究では、粘土鉱物の種類の同定から地球外天体にかつて存在した水環境の推定を行える点に着目した。だが、隕石試料は得られる試料の量に限りがあるため、少ない試料から多くの知見を推定できる新たな手法の開発が必須である。
本研究ではこの新たな手法として走査型透過X線顕微鏡 (STXM)に注目する。STXMはX線吸収微細構造 (XAFS)を数十ナノスケールの局所領域から取得することが出来、対象元素の配位環境や化学状態を解明することができる。すなわち微細鉱物中の元素がどのような構造・化学状態で鉱物中に入り込んでいるかを可視化し、それによって粘土鉱物の種類を同定することができる。
以上の事柄を踏まえ、本研究では、まず地球上の粘土鉱物を標準試料としてXAFSスペクトルを検出し、得られた結果を標準試料の特徴と合わせてまとめたデータベースの構築を目指した。また、実際の未知試料分析及びデータベース利用例として火星隕石Y000593 に産出する変質脈中の粘土鉱物の同定結果も報告する。
参考文献
D. T. Vaniman, D. L. Bish, D. W. Ming, T. F. Bristow, R. V. Morris, D. F. Blake, S. J. Chipera, S. M. Morrison, A. H. Treiman, E. B. Rampe, M. Rice, C. N. Achilles, J. P. Grotzinger, S. M. McLennan, J. Williams, J. F. Bell Ⅲ, H. E. Newson, R. T. Downs, S. Maurice, P. Sarrazin, A. S. Yem, J. M. Morookian, J. D. Farmer, K. Stack, R. E. Milliken, B. L. Ehl,amm, D. Y. Sumner, G. Berger, J. A. Crisp, J. A. Hurowitz, R. Anderson, D. J. Des Marais, E. M. Stolper, K. S. Edgett, S. Gupta, N. Spanovich, and MSL Science Team (2014) Mineralogy of a Mudstone at Yellowknife Bay, Gale Crater, Mars www.sciencemag.org Science Vol. 343. 24 January
T. Noguchi, T. Nakamura, and W. Nozaki (2002) Mineralogy of phyllosilicate-rich micrometeorites and comparison with Tagish Lake and Sayama meteorite Earth and Planetary Science Letters Vol. 202. 229~246
Y. Kebkawa and S. Nakazima. (2008) 炭素質コンドライト中有機物の熱的安定性と鉱物の効果 日本惑星科学会誌Vol.17. 4
地球外天体から飛来する隕石試料には、含水鉱物の一種である粘土鉱物と呼ばれる微細なケイ酸塩鉱物が含まれていることがある(Kebukawa and Nakazima., 2008)。粘土鉱物とは層状の結晶構造を持つケイ酸塩鉱物であり、主要構成元素はSi, Al, Fe, Mgである。四面体シートと八面体シートが1:1もしくは2:1で重なったシートが層状に積み重なった構造となっており、これらシートの重なり方や構成元素の含有量や配位位置によってこちらのように様々な種類が存在する。粘土鉱物の構造や組成の差異は生成環境に関連するため、本研究では、粘土鉱物の種類の同定から地球外天体にかつて存在した水環境の推定を行える点に着目した。だが、隕石試料は得られる試料の量に限りがあるため、少ない試料から多くの知見を推定できる新たな手法の開発が必須である。
本研究ではこの新たな手法として走査型透過X線顕微鏡 (STXM)に注目する。STXMはX線吸収微細構造 (XAFS)を数十ナノスケールの局所領域から取得することが出来、対象元素の配位環境や化学状態を解明することができる。すなわち微細鉱物中の元素がどのような構造・化学状態で鉱物中に入り込んでいるかを可視化し、それによって粘土鉱物の種類を同定することができる。
以上の事柄を踏まえ、本研究では、まず地球上の粘土鉱物を標準試料としてXAFSスペクトルを検出し、得られた結果を標準試料の特徴と合わせてまとめたデータベースの構築を目指した。また、実際の未知試料分析及びデータベース利用例として火星隕石Y000593 に産出する変質脈中の粘土鉱物の同定結果も報告する。
参考文献
D. T. Vaniman, D. L. Bish, D. W. Ming, T. F. Bristow, R. V. Morris, D. F. Blake, S. J. Chipera, S. M. Morrison, A. H. Treiman, E. B. Rampe, M. Rice, C. N. Achilles, J. P. Grotzinger, S. M. McLennan, J. Williams, J. F. Bell Ⅲ, H. E. Newson, R. T. Downs, S. Maurice, P. Sarrazin, A. S. Yem, J. M. Morookian, J. D. Farmer, K. Stack, R. E. Milliken, B. L. Ehl,amm, D. Y. Sumner, G. Berger, J. A. Crisp, J. A. Hurowitz, R. Anderson, D. J. Des Marais, E. M. Stolper, K. S. Edgett, S. Gupta, N. Spanovich, and MSL Science Team (2014) Mineralogy of a Mudstone at Yellowknife Bay, Gale Crater, Mars www.sciencemag.org Science Vol. 343. 24 January
T. Noguchi, T. Nakamura, and W. Nozaki (2002) Mineralogy of phyllosilicate-rich micrometeorites and comparison with Tagish Lake and Sayama meteorite Earth and Planetary Science Letters Vol. 202. 229~246
Y. Kebkawa and S. Nakazima. (2008) 炭素質コンドライト中有機物の熱的安定性と鉱物の効果 日本惑星科学会誌Vol.17. 4