JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS28] 歴史学×地球惑星科学

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、磯部 洋明(京都市立芸術大学美術学部)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(国文学研究資料館)

[MIS28-P01] 歴史地震研究におけるオンラインデータの整備

*加納 靖之1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:歴史地震史料、データベース、リンクトオープンデータ

これまで収集されてきた地震史料は,史料集として刊行されてきた.主なものとして,『大日本地震史料』,『増訂大日本地震史料』,『新収日本地震史料』,『日本の地震史料拾遺』が挙げられるほか,個別の地域あるいは地震を対象とした史料集が書籍や論文,報告書の形で刊行されている.「[古代・中世]地震・噴火史料データベース(β版)」[石橋 (2009)](https://historical.seismology.jp/eshiryodb/)や「ひずみ集中帯プロジェクト【古地震・津波等の史資料データベース】」“(http://seismology.jp/eri_eqdb/),「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト【史資料データベース】」[佐竹 (2018)]など,オンラインで地震史料を検索できるデータベースも公開されてきている.これらのデータベースでは,既刊の地震史料集をもとに史料を整理するとともに,校訂作業もなされている.

これらのプロジェクトでは,地震史料が膨大であることもあり,時代や地域を限定してデータベースが構築されている.広い年代や地域にわたる地震現象を把握するためには,これらのデータベースの横断検索の仕組みを整備することが有効である.また,現在,既刊の地震史料集のテキストデータ化が進められており,全文検索ができるようなデータベースの構築が望まれる.なお,既刊地震史料集の項目や掲載巻およびページを検索できる「歴史地震史料検索システム」[山中 (2015)]( http://etna.seis.nagoya-u.ac.jp/HistEQ/)が既に公開されている.

歴史地震研究においては,史料集だけでなく,地震カタログも作成されてきた.また,震源推定の根拠となった震度の推定値も一部で公刊されている.震度データをインタラクティブな地図に変換するためのソフトウェアmidop(https://emidius.eu/MIDOP/)を用いて,「わが国の歴史地震の震度分布・等震度線図(改訂版)」に掲載されている地震カタログおよび震度分布をもとに震度データベース構築した[加納・他 (2019)].midopでは複数の典拠に基づいてデータベースを構築できる.これまでの歴史地震研究の成果を整理し,一覧できるWebサイトとしての「震度データベース」として構築を進める予定である.

地震史料集の編纂にあたっては膨大な史料が参照されている.史料の所在情報は,史料集の記述や震源等の推定結果の検証や,新しい観点からの再調査のために有用である.地震研究所が保管する『新収日本地震史料』の編纂資料など,地震史料の所在情報の公開は今後の研究の発展に資する.前述の地震史料テキストや地震カタログと合わせ,リンクトオープンデータ(LOD)の形で公開することで,歴史地震研究だけでなく,関連する諸分野でも活用される情報となり得る.史資料の利用歴や所在情報の集約については,「れきすけ」[市野・他 (2019)]によって分野を越えた史料情報の共有が構想されており,効果的に連携する必要がある.