JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-01] 学校教育で使用されている地球惑星科学教材

2020年7月12日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.2

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学島嶼防災研究センター)、川手 新一(武蔵高等学校)、山本 政一郎(福井県立奥越特別支援学校)、根本 泰雄(立命館大学理工学部)、座長:根本 泰雄(立命館大学理工学部)

11:30 〜 11:45

[O01-10] 地理教育と地学教育の整合に向けた論点-「学術/教育」と「統一/非統一」にみる地理的見方・考え方に焦点を当てて-

★招待講演

*吉田 剛1 (1.宮城教育大学)

キーワード:共通項、国際性、変容性、人間形成、地理的概念、授業実践

山本・尾方(2018)は,高等学校の地理と地学の教育で共通する自然系の説明について,両教育で異なる用語が多く,学術と教育との齟齬があることを見いだした。「類型Ⅰ」は入試等の均等性,「類型Ⅱ」は両教育の有意義な連携,「類型Ⅲ」は大学以降の学習への影響等が問題視され,地理と地学の教育内容・教材等の共通項となる学術的な正確性が問い直された。そこで本稿は,まず「学術/教育」軸と「統一/非統一」軸から原理的に整理して考える。
 「学術/教育」軸は,学術用語・説明を教育の場や学習段階に応じて見下ろした場合に,児童・生徒に適応させるために必要な表現や説明にならざるを得ない。「統一/非統一」軸は,「統一」「非統一」共に利点が見いだせる。「非統一」の利点には,多様な捉え方によって,考えをめぐらせ,深めさせる切掛を与える。「統一」に固守した場合,何を持って「統一」するのか,その規準の設定が困難な場合もあり,「統一」による共通理解が難しい場合もあろう。他方で,「統一」の共通項となる教育内容があっても,分野固有の学習を深めるためには,各々の学術的な見方・考え方の育成が重要である。さらに,様々な専門分野の見方・考え方を効果的に連携して養うことは,総合的な人間形成に重要である。その時々の条件や場合によっては,「統一」「非統一」の使い分けの方向も認められる。図1から考えると,①領域は,義務教育の場面で重んじられる。③領域は,中等教育後期の場面にみられてくるため,本議論の主な対象場面となろう。この原理的な整理のもとで,「類型Ⅰ」,「類型Ⅱ」,「類型Ⅲ」の論点から議論が深められる。加えて,地域的,国内的,国際的な捉え方の点(「国際性」)や,歴史的(未来的)な変化(「変容性」)からの議論にも配慮が必要となる。
 このような整理のもとで,本稿では,地理的見方・考え方に焦点を当てて議論を深める。それは,「類型Ⅰ」の点からみると学術的な概念をもとに教育的に抽象的な語句や概念によって示されてきた経緯がある。そして,学習指導要領の変遷では,統一的に扱われてきたが,授業実践では,いわば非統一,言い換えると,やや曖昧に扱われてきている。「類型Ⅱ」の点からみると,従来,地学との接点が考えられていないため,有意義な連携を図るには,地学的見方・考え方の理解と連携に向けた調整が必要となる。「類型Ⅲ」の点からみると,新学習指導要領の地理的見方・考え方は学術的にみると,「国際性」とも関わるが,地理教育国際憲章の地理的概念に即しているため,統一的である。ただし,それは,新学習指導要領もとで社会的事象の地理的な見方・考え方や「視点」と「問い」との関わりから示されている点で教育的である。しかし,授業実践では,抽象度が高いため,非統一的にならざるを得ない。つまり,「国際性」の点では,前述のように統一的となるが,地域的,教師個人としてみれば,曖昧な傾向が強い。「変容性」の点では,「変容する/しない」の両側面があり,前者は,時代の必要性に応じる教育的な側面が強く,後者は,地理思想や地理原論等の学術的な側面が強くなろう。