JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG25] 惑星大気圏・電磁圏

コンビーナ:関 華奈子(東京大学大学院理学系研究科)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、前澤 裕之(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学科)、寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科)

[PCG25-08] オーロラ電子加速過程に関わる木星-イオ間の磁力線上のプラズマ分布についての研究

*齋藤 幸碩1加藤 雄人1熊本 篤志1木村 智樹1川面 洋平1 (1.東北大学理学研究科地球物理学専攻)

キーワード:木星-イオ系、磁化惑星、Alfven波

木星探査機Junoの観測により、数十keVから数百keVに至る幅広いエネルギー帯におけるオーロラ電子降下が確認された。観測された電子のエネルギー分布ならびにピッチ角分布から、地球では主要な加速機構ではないとされてきた「Alfvenic acceleration」が、木星のオーロラ形成に大きな影響を及ぼしていることが示唆された[Mauk et al., 2017]。磁化惑星におけるオーロラ形成でのAlfvenic accelerationの重要性が高まる一方で、被加速電子の特徴的なエネルギー分布やピッチ角分布を決定づける要因については未解明の問題が残されている。

 Alfvenic accelerationが効率的に生じる領域を考察するためには、磁気圏内でのAlfven波の伝播と波動特性の変化を調べる必要があり、Alfven速度の空間分布、すなわちAlfven波の伝播媒質であるプラズマの分布を明らかにする必要がある。そこで本研究では、木星とその衛星であるイオとの間の磁力線に沿ったプラズマ分布について、Static Vlasov Code [Ergun et al., 2000; Matsuda et al., 2010]を開発して定常状態での解を求める。Matsuda et al. (2010)では、イオ関連デカメートル電波放射源の高度を明らかにすることを目的として、Static Vlasov Codeにより木星-イオ間の磁力線上のプラズマ分布ならびにオーロラ加速域の形成高度が議論された。本研究ではMatsuda et al. (2010)を参考にコード開発を行い、プラズマ分布からAlfven速度を見積もる。Static Vlasov Codeでは、磁気赤道及び電離圏側の境界におけるイオンと電子の初期速度分布をbi-Maxwellian分布に従うと仮定して与えて、背景磁場強度の空間変化と重力、遠心力ならびに静電ポテンシャルによる速度分布の変化を計算し、プラズマの準中性条件が満たされる静電ポテンシャルの空間分布を反復法により求める。本研究ではまず境界条件として、木星側からH+とe-、イオ側からO+、S+、S2+、H+、cold e-、hot e-が放出されているものとし、木星とイオ間の静電ポテンシャル差は

30 kVとした。その結果、木星から0.029 RJ(RJは木星半径)の地点まで約30 kV、0.929 RJの地点まで約20.5 kV、2 RJ付近で約-20 Vと静電ポテンシャルが階段状に変化する様相が再現された。また、各イオン組成の沿磁力線方向の分布に基づいてAlfven速度を見積もると、高度1 RJ付近で光速に漸近し極大を持つ様相が示された。本発表ではStatic Vlasov Codeにより得られた結果の詳細を報告するとともに、境界条件を地球のパラメータを用いた計算との比較や得られた将来課題について議論する。