[PEM12-P14] 地上大気光イメージャと内部磁気圏衛星あらせによる夜間の中規模伝搬戦電離圏擾乱(MSTID)の初めての同時観測
キーワード:中規模伝搬性電離圏擾乱、あらせ衛星、超高層大気イメージングシステム、プラズマ波動観測器、電場観測器、高周波分析器
中規模伝搬性電離圏擾乱(MSTID)は、電離圏のF領域における伝搬する電子密度の擾乱である。その生成メカニズムは、地上由来の大気重力波が上方へ伝わり、電子密度擾乱を引き起こす説と、E-F結合パーキンス不安定性により引き起こされる説がある。MSTIDは磁気共役点において鏡像構造を持つことが、南北両半球の地上大気光イメージャの同時観測で知られている。もしパーキンス不安定性によりMSTIDが生成されE×Bドリフトで成長するならば、MSTIDの成長に関連する分極電場が磁力線に沿って伝搬し、内部磁気圏を飛行するあら衛星でも、その電場変動を観測できるはずであるが、そのような観測例はこれまで報告されていない。そこで本研究では、アラスカ州にあるGakona(62.39 N, 214.78 E)に設置された大気光カメラと内部磁気圏衛星あらせにより、2018年11月3日06:00:00-06:30:00 UTに観測されたMSTIDについて詳細な解析を行った。本研究ではこのMSTIDが発生したときの構造と、内部磁気圏の粒子の様子を把握することを目的とする。その結果、あらせ衛星がMSTIDの位相面に対してほぼ垂直に横切った時間帯に、あらせ衛星に搭載されたプラズマ波動観測器(PWE)の電場観測器(EFD)で観測された電場、高周波分析器(HFA)で観測された電子密度が、MSTIDの構造と関連してそれぞれ変動していた。あらせ衛星で観測された電場変動を電離圏に投影したところ、MSTIDの位相面に対して、ほぼ垂直であることが分かった。この向きは、MSTIDがE×Bドリフトで成長する分極電場の向きと一致している。また、電離圏の電場変動と伝搬の方向から、ペダーセン電流と背景電場の向きを推定したが、観測的にこれを検証することは難しかった。講演では、これらの観測事実をMSTIDの発生、成長メカニズムと対応させながら議論する。