JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM19] Dynamics of the Inner Magnetospheric System

コンビーナ:桂華 邦裕(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、Aleksandr Y Ukhorskiy(Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory)、三好 由純(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、Lynn M Kistler(University of New Hampshire Main Campus)

[PEM19-P04] LAMPロケット実験搭載の多波長オーロラカメラによる脈動オーロラ観測計画

八木 直志1、*坂野井 健1川村 美季1浅村 和史2三好 由純3細川 敬祐4Jones Sarah5Lessard Marc6 (1.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター、2.JAXA宇宙科学研究所、3.名古屋大学宇宙環境研究所、4.電気通信大学大学院情報理工学研究科、5.NASAゴダード宇宙飛行センター、6.ニューハンプシャー大学)

キーワード:脈動オーロラ、開発、ロケット、マイクロバースト、 光学機器

我々は、LAMPロケットに搭載するための多波長オーロラカメラAIC2の開発を進めている。今回、その開発状況と今後の計画を報告する。内部磁気圏赤道域で生成されるChorus波動が、磁力線に沿って伝播しながら電子と共鳴することで、幅広いエネルギー帯(数keV – 1MeV以上)の電子ピッチ角散乱を引き起こすと考えられる。従って、脈動オーロラとマイクロバーストとの相関が期待されるが、この同時観測はこれまでにない。LAMPロケットは、プラズマ粒子・磁場・光学の総合観測から脈動オーロラとマイクロバーストを同時に捉え、そのメカニズムを解明する事を目的とし、2020年12月にアラスカ・ポーカーフラットより打ち上げが計画されている。プロジェクトPIはNASA/GSFCのDr. Sarah L. Jonesであり、米国研究機関から熱的電子、低エネルギー電子、中間エネルギー電子、磁場計測器が、また日本からはPulsating AuRora and Microburst 2 (PARM2)と呼ばれる機器パッケージが提供される。PARM2は、オーロラカメラAIC2、高エネルギー電子計測器HEP(100keV - 2MeV)、フラックスゲート磁力計MIMから構成される。
 AIC2は2台のCMOS検出器部AIC-S1, S2とエレキ部AIC-Eから構成され、2波長同時撮像をおこなう、AIC-S1, S2の検出器には民生CMOSカメラZWO ASI183 MMが採用された。これにより、昨年のRocsat-XNロケット搭載AICに比べて、検出器性能に1/5以下の低ノイズ(3.6 e-RMS)と16倍のダイナミックレンジ(12 bit A/D)の向上を果たした。AIC-S1はE領域N2発光を対象とし、干渉フィルター(Andover、CW 670 nm、FWHM 20 nm)と対物レンズ(スペースコムJF17095M、f=17 mm、F/0.95、視野29° x 29°)から構成される。AIC-S2はF領域O 844.6 nm発光を対象とし、干渉フィルター(Andover、CW 846.1 nm、FWHM 4.4 nm)と対物レンズ(スペースコムHF3.5M-2、f=3.5mm、F/1.6、視野106° x 106°)から構成される。AIC-S1,S2ともに、S/N向上とデータ圧縮のために視野内の元の画素3660 x 3660をビニングして60 x 60 bin (16bit/bin)とする。まAIC2はロケットスピンを打ち消すためにデスパンプラットフォームに搭載される。これとロケット姿勢制御と組み合わせて、AIC-S1を磁力線フットプリント方向に向け、脈動オーロラの微細構造と降下電子の同時観測を行う。また、AIC-S2を西方向に向け、リムからロケット直下までの広域をカバーし、脈動オーロラのF領域O 844.6 nm発光高度分布と広域分布を取得する。時間分解能は10 frame/sである。Apex高度(~450km)時におけるロケット直下の1binあたりの空間分解能は、AIC-S1で3.0 km x 3.0 km(E領域)、AIC-S2で6.3 km x 6.3 km(F領域)である。AIC-Eは、2台のカメラ信号から生成される高速大量画像信号を処理するために、USB3インターフェースを有する2台のボードコンピュータNanoPi M4と、専用開発のFPGA・電源回路・信号処理回路から構成される。NanoPi M4のCPUの排熱のために、新規開発のヒートパイプが用いられる。
 AIC2の開発について、我々は2019年9月から翌2月にAIC-S1、S2とAIC-E間の電気インターフェース試験を行い、カメラの制御と10 Hz画像取得・処理(ビニング、データ圧縮)ならびにデータ転送を確認した。また、2019年6月、8月の国立極地研究所で校正試験を実施し、カメラゲイン450の場合AIC-S1とS2のダイナミックレンジはそれぞれ0.27 - 3100 kRと2.2 – 27000 kR、解能はそれぞれ48 R/bitと410 R/bitであることを確認した。さらに、2019年3月に フライトモデルとほぼ同等のデスパンテーブルの回転端子を用いて、AIC-E出力信号を模擬した通信試験を行った。これから、スリップリングを介する通信は、差動インターフェースとし、ケーブルのシールド対策ならびにツイストペア化するなどのノイズ対策を施せば、問題無く行えることを確認した。今後2020年7月までに国内にて真空・温度・振動試験、ならびにニューハンプシャー大にてフライトモデル仕様のデスパンテーブルを用いた電気試験が計画されている。