JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系小天体:リュウグウとベヌーの探査および太陽系小天体全般

コンビーナ:中本 泰史(東京工業大学)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、Dante S Lauretta(University of Arizona)、石黒 正晃(ソウル大学物理天文学科)

[PPS07-P01] はやぶさ2探査機が帰還させる小惑星リュウグウ試料キュレーションに向けた試験・リハーサルの進捗

*矢田 達1安部 正真1中藤 亜衣子1与賀田 佳澄1宮﨑 明子1岡田 達明1西村 征洋1熊谷 和也2吉武 美和1古屋 静萌1岩前 絢子2林 佑1山本 大貴1橘 省吾1,3臼井 寛裕1圦本 尚義1,4 (1.宇宙航空研究開発機構、2.マリン・ワーク・ジャパン、3.東京大学、4.北海道大学)

キーワード:はやぶさ2、リュウグウ、サンプルリターン、小惑星、キュレーション

小惑星探査機はやぶさ2は、2019年2月と7月の2回、近地球C型小惑星リュウグウ表面でのタッチダウンによる試料採集を行った[1]。探査機は昨年11月末に小惑星を離れ、今年の12月に採集した小惑星試料を収めた再突入カプセルを地球に帰還させる予定である[1]。この帰還に向けて、宇宙航空研究開発機構(JAXA)地球外物質試料キュレーションセンターでは、試料の受入・初期記載の準備を進めている。帰還した試料は地球大気に晒されたこのない、初めてのC型小惑星のサンプルである。この試料を地球大気に晒さずに取り扱う為に、昨年度末までにはやぶさ2帰還試料用のクリーンチェンバーを製作し、JAXA相模原キャンパスの地球外物質試料キュレーションセンターに新設したクリーンルーム内に導入した[2]。はやぶさ2帰還試料用クリーンチェンバーは、真空環境での作業を行う為のCC3-1及びCC3-2、真空から高純度窒素雰囲気に切り替えるCC3-3、高純度窒素環境での作業を行う為のCC4-1及びCC4-2の5つのチェンバーから構成されている。

 再突入カプセル帰還後、主に探査機サンプラー開発チームにより回収・分解・ガス採集作業が現地で行われる。真空環境で保持された試料コンテナは輸送用コンテナに窒素封入され、日本に持ち帰られる。JAXA相模原キャンパスの地球外物質試料キュレーションセンターに持ち帰られてからのプロセスとしては、(1)クリーンルーム内での開梱・試料コンテナ取り出し、(2)背面ヒートシールド取り外し、(3)クリーニング・清浄度評価、(4)コンテナ開封機構取り付け・分解、(5)クリーンチェンバーCC3-1への試料コンテナ導入、(6)チェンバーCC3-1の真空排気、(7)コンテナ開封、(8)サンプルキャッチャー取り出し、(9)サンプルキャッチャーのCC3-2への搬送、(10)キャッチャー蓋開封、(11)キャッチャーからの一部試料の取り出し・回収、(12)キャッチャーへの仮蓋の設置、(13)キャッチャーのCC3-3への搬送、(14)CC3-3の真空から高純度窒素環境への切り替え、(15)キャッチャーへの治具の取り付け、(16)キャッチャーのCC4-2への搬送、(17)キャッチャー全体の秤量・顕微鏡観察、(18)キャッチャーのCC4-1への搬送、(19)キャッチャーの分解、(20)キャッチャーからの試料回収、(21)回収した試料のCC4-2への搬送、(22)キャッチャーの各部屋試料の秤量・顕微鏡観察、(23)個別試料の拾い出し、(24)個別試料の秤量・光学観察・FT-IR及びMicrOmega分析、(25)搬送・保管の為の容器への収納、という流れになる。

 これまでに(4)及び(9)-(14)のリハーサルはそれぞれ2度行っており、手順・器具などの修正を行っている。その他の作業も含めて、3月から5月までにかけて順次、治工具・器具の準備が出来次第、各々の作業のテスト・リハーサルを実施する予定である。最終的に、テスト・リハーサルは9月までに完了し、10月にチェンバー・機器・治工具のリファービッシュを行ってから12月の帰還試料の受入に備える予定である。



参考文献

[1] Tachibana S. et al. (2020) LPS XXXXXI, abstract #2027.

[2] Yada T. et al. (2019) LPS XXXXX, abstract #1795.