JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 惑星科学

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、嵩 由芙子(会津大学)

[PPS09-06] 巨大衝突によって形成される惑星系の軌道構造の中心星質量依存性

*星野 遥1,2小久保 英一郎2,1 (1.東京大学大学院理学系研究科天文学専攻、2.自然科学研究機構国立天文台科学研究部)

キーワード:惑星形成、地球型惑星、巨大衝突、中心星質量

地球型惑星形成の最終段階とされる巨大衝突過程では、原始惑星が軌道交差および衝突合体を繰り返すことで個数を減らし、より安定な系へと進化していくと考えられている。現在までに発見されている多重惑星系は、太陽系の地球型惑星に比べて中心星の近くにコンパクトにまとまっているものが多く、既存の標準的な理論モデルでは説明できない。系の構造を決める要素として、円盤の質量や密度分布、原始惑星の分布などが議論されてきたが、中心星の質量については太陽質量に固定する場合がほとんどであり、影響の有無について明確な示唆はない。近年、中心星の質量を変えた理論計算も行われているが(e.g., Raymond et al. 2007, Ciesla et al. 2015, Matsumoto et al. submitted)、中心星質量の違いが系の構造にもたらす影響に着目した研究は今まで行なわれていない。また、太陽の0.1-0.6 倍の質量を持つM型星は、銀河系の星のうち約75 %を占める最も多く存在する星であり、観測技術が向上したことや、ハビタブルゾーンが中心星に近いことから、惑星探査計画が進められている。これらの観測と比較可能な理論計算を示すことは非常に重要である。そこで本研究では、巨大衝突過程において中心星の質量を太陽の0.05/0.1/0.2/0.5/1.0 倍と変化させた場合のN 体シミュレーションを行い、軌道構造の中心星質量依存性を初めて系統的に調べた。初期の原始惑星は、中心星から0.05 - 0.15 AU の領域に原始惑星の孤立質量に従って分布させ、1 億ケプラー周期の時間進化を追った。中心星からの位置を固定させて原始惑星の孤立質量を初期条件とした場合は、中心星の質量が小さいほど、軌道離心率や軌道傾斜角は大きくなり、ヒル半径で規格化した軌道間隔も狭まるという結果が得られた。このことから、低質量星の周りでは系の構造は不安定になりやすいと言える。また、中心星の質量が小さいほど大質量の惑星ができ、惑星の個数は減少する傾向が見られた。これらの結果に加えてハビタブルゾーン内に形成される惑星についても議論する。