JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 惑星科学

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、嵩 由芙子(会津大学)

[PPS09-11] 一酸化炭素を考慮した地球型惑星の炭素循環と表層環境進化

*青木 紘介1黒川 宏之2藤井 友香2 (1.東京工業大学、2.地球生命研究所)

キーワード:地球型惑星、惑星表層環境、炭素循環、酸化還元度

地球型惑星の表層環境、特に表面温度は、生命の起源・居住可能性を議論するにあたって非常に重要である。惑星の表面温度は大気組成に大きく左右され、また、地球型惑星の大気組成は、表層-マントル間の炭素循環によって時間進化していく。これまでの地球における炭素循環の研究では、マントルは酸化的であり、マントルからの脱ガスはCO2で構成されているという前提のもとで行われていた。しかし昨今、地球化学的証拠から初期マントルは還元的(Aulbach & Stagno 2016)であり、初期大気にはCOが存在していた可能性が示唆されている(Endo et al. 2016)。しかしながら、初期地球マントルの酸化還元度は未解明であり、COが大気に加わると表面温度はどのように変化するのか、炭素循環にどう影響するのかもわかっていない。

したがって本研究では、マントルの酸化還元度の違い、大気中のCOの存在が、地球をはじめとする地球型惑星の表層環境進化にどのような影響を及ぼすかを明らかにすべく研究を行った。そのために、二つの過程の理論モデル計算を行った。第一に、様々なCO2, CO 分圧に対し大気の放射対流平衡計算を実行することで表面温度を求めた。計算には大気構造・光化学計算コードatmos (Kasting et al. 1984)を改変して使用した。第二に、放射対流平衡計算の結果を用いて、既存の炭素循環モデル(Foley, 2015)にCO を導入することで、45億年間の表面温度・大気組成進化を計算した。本研究ではマントルからの脱ガスについて2つのモデルを考えた。1つ目は現在のCO,CO2脱ガス比のまま一定であるようなモデル、2つ目は初期において脱ガス成分がCOにより富んでいる(マントルが還元的だった)場合を仮定したモデルである。本研究では、COの酸化によるCO2生成は水素の散逸に律速されると仮定し、水素の大気散逸率からCO酸化率を決定した。

様々な圧力のCO, CO2大気の放射対流平衡計算を行った結果、CO2分圧が1bar未満ではCOが多い大気ほど表面温度は低くなった。これは、COが増えることで惑星のアルベドが上昇するためである。一方、1bar以上ではCOが多いほど表面温度が上昇することがわかった。これは、全圧が上昇することでCO2の温室効果が促進されるため(pressure broadening)である。

続いて、前述した放射対流平衡計算の結果を地球型惑星での炭素循環モデルに組み込むことで、惑星表面温度・大気組成の時間進化を前述の2つのモデルについて計算した。その結果、両モデル共に初期条件にかかわらず多くのCO(4-70 bar)が大気に残り続けた。初期の還元的マントルを仮定したモデルの方がより多くのCOが残留し、このときの表面温度は長期間で273 K以下となった。これは、長期間海洋の凍結が生じる温度であるため、地球の地質学的証拠と矛盾する結果となった。一方で脱ガス比一定モデルでは、表面温度が273 K以上となり、現実性を帯びた結果となった。これらの結果から、初期地球マントルが現在同様に酸化的であった、もしくは実際の地球では本研究で考えなかった何らかのCOが除去されるプロセスが存在した可能性が示唆された。