JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS10] 太陽系物質進化

コンビーナ:藤谷 渉(茨城大学 理学部)、松本 恵(東北大学大学院)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、日比谷 由紀(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海底資源センター )

[PPS10-P07] 極端紫外領域における炭素質コンドライト隕石のスペクトル測定

*赤玉 裕匡1吉岡 和夫1三河内 岳1 (1.東京大学)

キーワード:炭素質コンドライト、極端紫外光、宇宙風化

多くの宇宙探査ミッションでは、対象の物理量や物質組成の理解を目的とした分光観測が行われてきた。中でも、固体天体の表層環境に着目した過去のミッションを概観すると、赤外領域や可視が主な観測帯域として用いられてきた。一方、近年では、MESSENGER、MAVEN、DAWNなど、紫外領域で分光観測を行うミッションも少なくない。これらのミッションが紫外で観測を行う理由の一つに、この波長領域のスペクトルが、赤外や可視で分からない分子内の電子遷移の状態を反映する点が挙げられる。電子遷移の状態は、宇宙線や太陽放射線に曝されることで経年変化する。この作用は「宇宙風化」と呼ばれ、その定量的な評価は、観測で得られる現在の情報とその物質の過去の姿を結びつける。例えば炭化水素の場合、風化が進み炭素・水素原子間の結合が切断されると、スペクトルが赤化することが知られている。

分光観測装置から得られるスペクトルの情報から、天体の物理的・化学的状態を議論する上では、実験室における比較対象試料のスペクトル測定が不可欠である。本研究で着目した炭素質物質は、生命の材料物質となりうるものであり、それらの状態を調べる科学的意義は大きい。一般的な傾向として、これらの物質は、紫外に限らず広い波長領域で反射率が低いため、スペクトルの測定には困難を伴うが、近紫外領域(波長200~380nm)では、黒鉛や石炭などの試料の反射スペクトルを測定した先行研究が存在する(Applin et al. 2018)。対して、極端紫外領域(波長<150nm)では、近紫外と比べてもさらに反射率が低く、利用できる光源の種類も限られるため、いまだ普遍的な測定手法は確立されていない。

我々は、先行研究で紫外光源として広く用いられてきた重水素ランプではなく、極端紫外光の照射も可能な高周波励起型ガスフローランプを用いて、炭素質コンドライト隕石の反射スペクトルを測定する手法を確立した。本発表では反射率測定方法の詳細と、実際にアエンデ隕石の反射スペクトルを測定した結果を紹介する。