JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] ICDP オマーン掘削プロジェクト

コンビーナ:高澤 栄一(新潟大学理学部理学科地質科学科プログラム)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、Sayantani Chatterjee(Niigata University, Department of Geology, Faculty of Science)

[SCG56-P05] オマーン陸上掘削試料の弾性波速度に基づいたダイアベースでの空隙形状

*長瀨 薫平1片山 郁夫1畠山 航平1赤松 祐哉1岡崎 啓史2阿部 なつ江3道林 克禎4 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻、2.海洋研究開発機構、3.国立研究開発法人海洋研究開発機構研究プラットフォーム運用開発部門マントル掘削プロモーション室、4.名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻)

キーワード:海洋地殻、オフィオライト、Vp/Vs比、アスペクト比

海底地震波探査による観測から、海洋地殻第2層と第3層の境界近くには、Vp/Vs比の非常に低い領域が存在していることが知られている(Spudich and Orcutt 1980)。このような低いVp/Vs比を説明するものとして、珪長質岩体の存在が考えられる。しかしながら、珪長質岩体はオフィオライト層序において非常に局所的であることが多い(Christensen and Smewing 1981)。一方で、このようなVp/Vs比の低い領域は、アスペクト比の大きな空隙によっても説明することが可能性である(Shearer 1988)。これまで、海洋地殻の岩石の空隙形状についてあまり注目されてこなかったため、その実態はいまだ明らかでない。そこで、本研究ではかつての海洋地殻の断片であるオフィオライトのダイアベース(輝緑岩)を用いて弾性波速度と空隙率を同時測定することによって理論モデルから空隙のVp/Vs比を推定し、海洋地殻でみられる低いVp/Vs比の要因について考察した。
 試料はオマーンオフィオライト陸上掘削計画で採取されたダイアベースを用いた。空隙による弾性波への効果を見るために、熱水変質を特徴づける鉱物(角閃石、緑泥石、緑簾石)が多く空隙率の高いダイアベースと少量の熱水変質鉱物を含んだ空隙率の低いダイアベースを選んだ。弾性波速度と空隙率の同時測定は容器内変形透水試験機(嶋本ほか 2006)を用いて常温下で行い、間隙水圧は1 MPaで一定にして、封圧を3 MPaから200 MPaまで段階的に上げて行った。弾性波速度はパルス透過法で得られた波形を解析し、VpとVsの2成分を求めた。空隙率は、ガスピクノメーターから求めた加圧前の空隙率と試料の圧密によって空隙から押し戻される水量より算出した。
 今回の実験では、どちらの試料おいても加圧に伴う空隙率の減少と弾性波速度の増加が観察された。実験で得られた弾性波速度からそれぞれの封圧下におけるVp/Vs比を算出した。空隙率の低いダイアベースでは空隙率の増加に伴ってVp/Vs比が徐々に増加していく傾向だったのに対して、空隙率の高いダイアベースではVp/Vs比は減少していく傾向が見られた。測定した空隙率と弾性波速度を用いて、弾性論に基づく理論モデル(Kuster and Toksoz 1974)から空隙のアスペクト比を推定した。高圧下での空隙のアスペクト比は空隙率の低いダイアベースと空隙率の高いダイアベースにおいて一桁の違いが見られた。今回の測定で、空隙率によってダイアベースの空隙形状が異なることが明らかになった。このことから、海洋地殻上部における低Vp/Vs比はアスペクト比の大きな空隙で説明することができるかもしれない。