[SCG62-06] 日本海溝アウターライズにおけるグラーベン充填堆積物中のイベント層
キーワード:アウターライズ、日本海溝
アウターライズでは海洋プレートの曲がりに伴う正断層運動によりホルスト・グラーベン構造が形成される。プレート境界における巨大地震の後には大規模なアウターライズ地震が発生することが多いものの、2011年東北地方太平洋沖地震の後には大規模アウターライズ地震が未だ発生していないことから、日本海溝のアウターライズにおける地震発生履歴の解読は重要である。一方で、アウターライズにおける断層群は10本程度に分散しており、各々の断層の活動履歴や地震性/非地震性すべりの分配はこれまで明らかになっていない。これらの解読のためには、大規模な構造探査に加えて、より小さいスケールでの堆積学的研究からの貢献が期待される。
本発表では、2015年および2019年の新青丸KS-15-3/KS-19-14航海において三陸沖日本海溝アウターライズから得られた知見を概観する。KS-15-3航海ではアウターライズのホルストおよびグラーベンから7本のピストンコアを採取した。火山灰分析に基づくコアの年代から、三陸沖アウターライズの堆積物は約2-45 cm/kyの平均堆積速度を持ち、堆積速度はホルストで小さくグラーベンで大きいことが判明した。グラーベンのコアの肉眼観察・X線CT分析・XRFコアスキャナー(ITRAX)分析からは、火山灰に富む平行葉理を基底とし、Mn濃度の「高止まり」で特徴づけられる無構造な泥層が累重する堆積相が複数見つかり、イベント層と解釈される。グラーベンは海溝軸に接続しておらず、海溝からの堆積物流入は考えられない。このイベント層が地震による擾乱で形成されたと仮定すると、その堆積頻度は海溝型巨大地震の発生間隔より低い可能性が大きいことから、イベント層はごく限られた範囲の地震性断層運動を記録している可能性がある。KS-19-14航海では、各グラーベンの長軸に沿った測線でサブボトムプロファイラー(SBP)による浅部地下構造探査結果を行った。その結果、グラーベンを新規に充填する堆積層は海側ほど薄く、海溝に近付くにつれ厚くなることが判明した。コアの記載は現在進行中であるが、KS-15-3航海でグラーベンから採取したコアの分析結果と比較すると、グラーベン充填堆積物の約半分程度がイベント層である可能性がある。今後、航海で得られたデータの解析をさらに進め、アウターライズ断層系の活動履歴を明らかにしていきたい。
本発表では、2015年および2019年の新青丸KS-15-3/KS-19-14航海において三陸沖日本海溝アウターライズから得られた知見を概観する。KS-15-3航海ではアウターライズのホルストおよびグラーベンから7本のピストンコアを採取した。火山灰分析に基づくコアの年代から、三陸沖アウターライズの堆積物は約2-45 cm/kyの平均堆積速度を持ち、堆積速度はホルストで小さくグラーベンで大きいことが判明した。グラーベンのコアの肉眼観察・X線CT分析・XRFコアスキャナー(ITRAX)分析からは、火山灰に富む平行葉理を基底とし、Mn濃度の「高止まり」で特徴づけられる無構造な泥層が累重する堆積相が複数見つかり、イベント層と解釈される。グラーベンは海溝軸に接続しておらず、海溝からの堆積物流入は考えられない。このイベント層が地震による擾乱で形成されたと仮定すると、その堆積頻度は海溝型巨大地震の発生間隔より低い可能性が大きいことから、イベント層はごく限られた範囲の地震性断層運動を記録している可能性がある。KS-19-14航海では、各グラーベンの長軸に沿った測線でサブボトムプロファイラー(SBP)による浅部地下構造探査結果を行った。その結果、グラーベンを新規に充填する堆積層は海側ほど薄く、海溝に近付くにつれ厚くなることが判明した。コアの記載は現在進行中であるが、KS-15-3航海でグラーベンから採取したコアの分析結果と比較すると、グラーベン充填堆積物の約半分程度がイベント層である可能性がある。今後、航海で得られたデータの解析をさらに進め、アウターライズ断層系の活動履歴を明らかにしていきたい。