[SCG66-03] トランスポンダーの入れ替えを伴うGNSS/音響測地データの解析Ⅱー台湾北東部(宜蘭沖)の例ー
キーワード:海底地殻変動、GNSS/音響観測、音響トランスポンダ、沖縄トラフ
本研究では,台湾北東部宜蘭沖における海底測地観測において機器の交換により分断され不連続となったデータの解析を行った.海底測地では,海底に音響トランスポンダーを設置し,観測船を使って音響測距を行うことにより,その位置の変動を監視する.この観測点では,これまでに電池の不具合が原因でトランスポンダーが交換され,交換前後で使用された共通のトランスポンダーは1台だけであった.この場合,交換前後での海底局の変動は共通する唯一のトランスポンダーの推定位置に依存してしまい,海底局の変動を連続に解くことはできない.連続で解くためには,交換前後で使用されている共通のトランスポンダーの位置を正確に推定する必要がある.そこで本研究では海底局位置を連続に解くために,そのトランスポンダーのデータを含んだエポック(2010年6月)を新たに解析し,共通に使用されたトランスポンダーのデータを増やした.その結果,時系列の各成分のトレンドはそれぞれ,南北成分で南へ71.0±5.8mm/yr,東西成分で東へ43.7±10.3mm/yr,上下成分で下へ62.6±9.6mm/yrとなった.この結果を2010年6月の観測データを含めなかった場合と比べると水平2成分のトレンドは異なり,交換前後の時系列におけるオフセットが低減した.しかし,交換以前の各エポックの推定された海底局の位置はトレンドに対して依然として大きくばらついており,現状では交換前後で時系列を同じ精度で比較できない.交換前後でトレンドに対するばらつきの大きさに差がある要因として,交換後よりも交換前のほうが解析に使用した音響データ数が少なく,データのクオリティは交換前のほうが劣っていることが考えられる.また,トレンドに対する各エポックのばらつきが交換前のほうが大きい傾向は,南北成分よりも東西成分のほうに顕著に表れている.これには現場海域の音速度構造の、特に東西方向に大きな変化が影響している可能性が考えられる.