JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG66] 海洋底地球科学

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG66-P03] 砂箱を用いたアナログ実験による変形同時期の堆積作用が前弧堆積盆の層序と付加ウェッジの成長様式に与える影響評価

*野田 篤1高下 裕章1山田 泰広2,3,4宮川 歩夢1芦 寿一郎5 (1.産業技術総合研究所、2.海洋技術開発機構、3.高知大学理工学部、4.ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校地球科学部、5.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:付加ウェッジ、前弧堆積盆、アナログ実験

沈み込み帯の前縁に発達する前弧堆積盆は,付加ウェッジの変形と成長の詳細な履歴を地層として記録していることが期待される.しかし,堆積盆における堆積作用と付加ウェッジの変形・成長との相互関係,特に(1)ウェッジの変形が堆積盆層序に与える影響,(2)変形同時期の堆積作用がウェッジの成長様式に与える影響については,よく分かっていない.この研究では,砂箱を用いて,成長する付加体の表層に堆積作用がある場合とない場合とを再現したアナログ実験を行った.実験では,付加ウェッジの成長パターンの変化にともない,堆積盆の層序も変化することが分かった.付加ウェッジの前縁が海溝側へ移動しながら付加体が成長する時(frontal accretion phase),堆積盆の位置(地形的な凹地)も海溝側へ移動した.一方,付加ウェッジ前縁のスラストが長く活動する時(underthrusting phase),ウェッジの下に入り込んだ海溝充填堆積物がウェッジを陸側に傾動させ,堆積盆の位置は陸側へ移動した.付加ウェッジ前縁のスラストの変位量が大きくなると,ウェッジ後方堆積盆(retro-wedge basin)とウェッジ上堆積盆(wedge-top basin)が結合して,広い堆積空間が生じ,前弧堆積盆が発達する.このような2つの異なるタイプの堆積盆層序(海溝側および陸側への堆積中心の移動)は,異なる2つのタイプの付加体成長様式(frontal accretion phaseとunderthrusting phase)によって決まり,その成長様式の違いは内側ウェッジと外側ウェッジの底面におけるせん断強度の差違を反映していると考えられる.つまり,ウェッジ表層における堆積作用がウェッジ下部の垂直応力を変化させ,その変化がウェッジの変形様式に影響を与えている可能性がある.これらの結果は,前弧堆積盆での堆積作用が付加体の成長パターンを変化させ,さらに付加体の成長パターンの変化が前弧堆積盆の埋積様式にも影響を与えることを示唆している.