JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM21] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

コンビーナ:松野 哲男(神戸大学海洋底探査センター)、畑 真紀(東京大学地震研究所)

[SEM21-06] 掘削コア試料の測定による火山地域の岩石の比抵抗特性とその考察

*藤井 元宏1林 為人1石塚 師也1澁谷 奨1,2 (1.京都大学大学院工学研究科、2.地圏総合コンサルタント)

キーワード:比抵抗特性

物理探査法の1つである電気・電磁探査法は地層の電気的特性を利用することで,地下の比抵抗構造を可視化することが出来る。一方で,電気・電磁探査法の本来の目的である地下の地質構造や地下水構造を推定するためには,得られた比抵抗構造を適切に解釈する必要があるので,地下を構成する岩石の比抵抗特性を理解しなければならない。岩石の比抵抗特性は,比抵抗に影響を及ぼす要因を任意に設定できる室内比抵抗実験を行うことによって得ることが出来る。本研究では,2017-2018年に阿蘇火山帯で掘削された鉛直ボーリングのコア試料を用いて室内比抵抗実験を行い,各種岩石の比抵抗ならびにその比抵抗に影響を及ぼす要因についての評価を行った。
測定用の供試体として,長さ20cm程度のコア試料から複数の供試体を取得し,全供試体の測定を行うことで,データの信頼性を高めた。供試体は直径約6cm,長さ約3cmの円柱体とし,上下端面を平滑に整形した。測定に利用した供試体は砂岩,微晶質安山岩,多孔質安山岩,礫岩,凝灰質礫岩の計5種類であり,砂岩に関しては2つ,微晶質安山岩に関しては3つ,その他の岩石に関しては4つの供試体がそれぞれ得られている。有効間隙率の範囲は砂岩が56%,微晶質安山岩が4%,多孔質安山岩が21-25%,礫岩が24-29%,凝灰質礫岩が17-19%となっている。比抵抗測定は交流インピーダンス法を用い,4極法により行った。大気圧・常温環境下で種々の間隙水比抵抗と含水飽和度条件において岩石の比抵抗を測定することで,岩石の比抵抗に及ぼす間隙率,含水飽和度,間隙水比抵抗などの影響を定量的に評価した。なお,供試体を飽和する溶液はそれぞれ純水とKCl溶液(5000と20000 PPMの2種類)を用い,間隙水の比抵抗は岩石が完全飽和した時の浸水溶液の比抵抗実測値に等しいとした。
測定結果より間隙率と飽和状態の岩石の比抵抗の間には負の相関関係が明瞭に認められ,両者は両対数グラフにおいて概ね直線的な関係となっていることが確認された。また,間隙水のKCl溶液濃度条件を変えても,両者の相関関係は大きく変化しないことが確認され,林ほか(2003)などのデータと一致することが確認された。飽和度と岩石の比抵抗の関係は,飽和度の大きい範囲では飽和度の低下に伴って比抵抗が徐々に大きくなるが,飽和度の小さい範囲では急激に大きくなることが確認された。また,飽和度と間隙率から体積含水率を求め,体積含水率と岩石の比抵抗の関係を両対数グラフ上で表すと,両者は実験を行った全岩種についてほぼ同一の直線状に乗り,体積含水率と岩石の比抵抗の間には密接な関係があることが確認された。間隙水比抵抗と飽和状態の岩石の比抵抗の関係は間隙水比抵抗が大きくなると,岩石の比抵抗も大きくなる傾向にあることが認められたが,間隙水比抵抗が高い領域では岩石の比抵抗の増加程度は間隙水比抵抗が低い領域と比べて小さくなることが確認され,間隙水比抵抗が高い領域ではアーチーの式が成立しなくなることが確認された。