JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP36] 鉱物の物理化学

コンビーナ:鎌田 誠司(東北大学学際科学フロンティア研究所)、鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)

[SMP36-P02] Scotland,Strontian鉱山のzeoliteおよびgalenaから見る周辺地質について

*井上 裕貴1安井 万奈2萩谷 宏1山崎 淳司3 (1.東京都市大学知識工学部自然科学科、2.早稲田大学理工学術院総合研究所 、3.早稲田大学創造理工学部環境資源工学科)

キーワード:ゼオライト、ストロンチアン鉱山、鉛同位体比、方鉛鉱

Strontian鉱山はイギリス北部ScotlandのEdinburghから約170km北西に位置する。Strontian鉱山はストロンチウム(元素名)の語源として知られ、18世紀には鉛・亜鉛の鉱山として、20世紀以降は主にバリウムの鉱山として採掘が行われていた。また、この場所では鉱石以外にもSrやBaを含む特異なzeoliteが報告されている(Green et al, 2008)。

 歌田(1995)は伊豆半島において母岩と美晶 zeoliteの間には成分において直接的な関係がないと報告しているが、近年、藤田ら(2016)は小笠原諸島で産出するzeoliteについて母岩とその組成において密接な関係があると示唆している。本研究ではStrontian鉱山に産出するzeoliteと母岩および周辺岩石との組成を比較し、zeoliteの形成と周辺地質の関係性について検討することを目的とする。

 Strontian鉱山周辺の地質は、1000~500MaのMoine、1000~500Ma のArdgour花崗片麻岩が広く分布し、それらを430MaのCaledonianの花崗岩類、300Maのアルカリ玄武岩質の岩脈が貫入している。地表では確認されていないが、それらの岩石の基盤には3.0~1.7GaのLewis片麻岩が存在すると推定される。鉱山は花崗閃緑岩と花崗片麻岩の境界部分に大きな5つの鉱床の連なりとして存在する。

 本研究では地表地質調査と鉱山内の産状観察を行い、Strontian鉱山で産出されるzeolite、周辺の岩石についてSEM-EDS及びXRF、XRDを用いて分析を行った。Strontian鉱山で産出するzeoliteはharmotome、brewsterite、heulandite-Srの3種類がXRDおよびSEM-EDSにより確認された。また、これらの鉱物の共生関係からzeoliteの生成時の温度は65~85℃と推定された。これらのzeoliteはⅡ価の陽イオンに富んでおり、中でもSr、Baの割合が非常に多いことが明らかとなった。Strontian鉱山周辺の花崗閃緑岩は全岩組成でSrおよびBaが周辺岩石に比べ高く、鉱物単位においてはplagioclaseのSr及びBaの含有量が特に高いことが確認された。鉱山内の岩石中のplagioclaseは一部sericite化しており、もとのplagioclaseからのCaの溶脱、Kの増加がみられた。

 Galenaに含まれるPb同位体比からStrontian鉱山の鉱床の形成年代は430Maと試算された。この試算は2.68Ga(Chapman. 1977)のルイス片麻岩の部分融解によるPb同位体比への寄与を考慮した上で地殻形成を仮定した結果であり、Strontian花崗岩類に含まれるzirconおよびtitaniteのU-Pb年代:423~425Maとほぼ一致していた。このことよりGalenaの形成にはStrontianの花崗閃緑岩の貫入が直接関係していると推定される。

 これらzeoliteとgalenaの分析結果からStrontian鉱山では430MaのStrontian花崗閃緑岩の貫入(2.7Gaのルイス片麻岩が部分融解しPb同位体に寄与)に伴う熱水循環により花崗閃緑岩由来のPb、Sr、Ba、がStrontian鉱床群を形成し、最後に一連の熱水循環の温度低下とともに脈に含まれる熱水がzeoliteを形成したと考えらえる