JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] 地殻構造

コンビーナ:中東 和夫(東京海洋大学)

[SSS11-10] 南海トラフ周辺域の断層分布

*高橋 成実1,2新井 麗1勝山 美奈子1田中 恵介1仲西 理子1鎌田 弘已1佐藤 智之3井上 卓彦3大角 恒雄2藤原 広行2金田 義行4,1,2 (1.海洋研究開発機構、2.防災科学技術研究所、3.産業総合研究所、4.香川大学)

キーワード:南海トラフ、断層分布、反射法地震探査

2013年より海域に行ける断層情報総合評価プロジェクトを進めている。海洋研究開発機構や石油天然ガス・金属鉱物資源機構、産業総合研究所を始め、様々な研究機関や組織が取得した反射法探査データと地殻構造データを収集し、日本海、南西諸島海域、伊豆小笠原海域の地殻内に発達する断層の空間分布をマッピングしてきた。昨年以来、南海トラフ海域の断層をマッピングし、断層分布としてまとめたので報告する。

南海トラフ沿いでは南からフィリピン海プレートが沈み込み、繰り返しマグニチュード8以上の巨大地震が発生している。東側では、伊豆小笠原島弧が本州弧に衝突し、島弧地震の圧縮変形が発達している。一方、西側では、四国海盆拡大前の伊豆小笠原島弧の一部であった九州パラオ海嶺が沈み込み、複雑なテクトニクスが展開されている。このような南海トラフ海域に発達する断層分布を把握することは応力場をモニタリングする意味でも重要である。

このプロジェクトでは、各海域で共通のデータ処理と解釈を心がけてきた。マルチチャンネル反射法探査データに速度解析、スタッキング、多重反射波除去、マイグレーション等の処理を施し、共通のデータ処理を施した。シングルチャンネル反射法探査データも水平方向の連続性を強調するフィルタリング処理を施した。断層の解釈にあたり、海底地形や地質構造に変形が認められることと反射記録断面に断層面や地層の連続性が読み取れることが条件とした。反射断面上で読み取ることができる下端も特定し、3次元速度構造を構築した上で、その断層の下端の情報も断層の連続性の判断に使用した。
その結果、下記のような特徴が認められた。(1)駿河湾では東西方向に圧縮軸を持つ褶曲構造が一部に見られるが、空間的に連続する断層は少ない。(2)沈み込むフィリピン海プレート側の銭洲海嶺周辺では、地殻をいくつかのブロックに分ける横ずれ断層が発達する。(3)東海沖では、逆断層である東海断層系と小台場断層系、横ずれ断層である遠州断層系がトラフ軸から順に発達し、浜松沖では正断層が発達する。(4)熊野灘沖では巨大分岐断層が発達し、その海側では小規模な分岐断層が発達し、熊野海盆内にも小規模の逆断層が分布する。(5)紀伊水道沖では紀南海山列につながる海山が沈み込んでいるが、トラフ軸に近い海域と海山の北側では逆断層、海山のトラフ軸側では小規模な正断層が分布する。(6)土佐沖は、トラフ軸に近い海域と室戸岬から続く地形的な高まりに沿って逆断層が発達する、(7)豊後水道では小規模な逆断層が多数分布するが、走向は北東-南西方向を示し、土佐沖と異なる特徴を示す。(8)九州パラオ海嶺の沈み込み域の西側の日向灘では、小規模な正断層と横ずれ断層が分布し、互いに共益な断層も確認できる。(9)種子島沖では空間的に連続する断層は少ない。これらの各種データや断層トレースを、データベースに登録し維持管理できる仕組みを構築した。