JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 地震活動

コンビーナ:吉田 康宏(気象庁気象大学校)

[SSS13-P03] 短期間に続発する地震の発生原因に関する考察(大隅半島東方沖の事例)

*山田 祐子1廣田 伸之2新原 俊樹1 (1.気象庁 福岡管区気象台、2.気象庁)

キーワード:地震の続発、相似地震、大隅半島東方沖

大隅半島東方沖の一部領域(領域aとする)では、数秒~1時間の非常に短い期間にM3~4程度の地震が連続して発生する傾向が見られる。これらの地震の規模は大きくないが、地震が連続して発生するしくみを明らかにすることは、地震発生後に同規模程度以上の地震が続発する可能性の予測を可能にし、防災上の呼びかけに資することが期待される。本研究は、当該領域で連続して発生する地震について、地震波形の相関解析と観測点限定・補正による詳細な位置の分析を行い、地震が連続して発生するしくみの解明を目指した。2001年1月~2019年3月の期間に、領域a内で発生したM3.0以上の27地震を調査対象とした。各地震について、気象庁の津波地震早期検知網9観測点の速度波形(UD成分)からP相検知時刻の0.5秒前から40秒間(直後に別の地震による波形が混在している場合はその直前まで)を抽出し、観測点別にコヒーレンス値を算出した。コヒーレンス値=0.95以上となる観測点が2点以上ある組合せを相似地震とした。また、コヒーレンス値=0.93以上0.95未満となる観測点が2点以上ある組み合わせについても、相似地震に準じて扱った。
各組合せについての相似地震を判定したところ、調査対象の27個の地震のうち14個が相似地震として抽出され、さらに3つのグループ(グループA、B、C)に分類できた。各グループの地震の規模は概ね同規模(グループA:M3.0~3.5、グループB:M3.4~4.1、グループC:M3.2~3.5)である。グループ別に時系列で地震の発生状況を整理したところ、時間的周期性は認められなかったが、この領域の地震の続発事例のほとんどにグループA~Cいずれかの地震が含まれており、あるグループの地震が発生した後、別のグループの地震が続けて発生した事例もあった。また、続発事例のうち、グループAの地震は続発事例の最後に発生する傾向があるという特徴がみられた。次に、調査対象の地震について観測点限定・補正をして詳細な震源の位置を調べたところ、他の地震と相似性が認められなかった地震が比較的周辺に分布しているのに対し、グループA~Cの地震は概ね一か所に重なり合って分布していた。また、一部の地震は数十秒の短い時間間隔で発生したため、40秒間の速度波形を確保できず、他の地震との相似性を認めることが難しかったが、いずれもグループA~Cが集中する場所で発生していることから、これらのグループの各地震と相似地震であった可能性は否定できない。
プレート境界で発生する「繰り返し相似地震」は、相似地震を発生させる固着域において、定常的なプレート運動に伴う周辺の非固着域の非地震性すべりによる応力の蓄積と地震発生が繰り返されることによると解釈されている(Matsuzawa et al.,2002)。調査結果より、領域aではM3~4程度の相似地震を発生させる3つの小固着域が隣接しており、ある固着域で発生した地震に伴う応力変化を受けて隣接する固着域で地震が引き起こされていると考えられる。また、続発する地震を発生させる固着域の組合せが毎回異なるため、各固着域で発生する地震の繰り返しの周期が定まらないのかもしれない。グループAの地震は続発事例の最後に発生する傾向があることから、リアルタイムで発生する領域a内の地震の波形から過去のグループBやCなどの地震と相似地震か否かを判定することにより、グループAの地震の続発の可能性を直前に知ることができると考えられる。グループAの地震の規模はM3程度であり、領域a内の続発事例は続発までの時間的な猶予も非常に短いが、他の領域で発生する規模のより大きな続発事例について同様の傾向が見られれば、防災の観点で有効である。