JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地殻変動

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

[SSS14-P05] GNSSとひずみデータを同時に使った長期的スロースリップのインバージョン解析

*露木 貴裕1小林 昭夫1秋山 加奈2甲斐 玲子2宮岡 一樹2 (1.気象庁気象研究所、2.気象庁)

キーワード:ひずみ観測、GNSS観測、長期的SSE、インバージョン

南海トラフ沿いでは長期的スロースリップイベント(SSE)が繰り返し発生しているが,その検出やすべり分布の解析には主としてGNSSのデータが用いられている.ひずみ計による観測データは,短期的SSEのような数日程度の変化に対しては検出レベルが高いが,数か月から数年程度の変動の検出レベルは逆に低く[Yamamoto et al., 2008],気象庁の東海地域に設定されているひずみ計のデータには2001年~2007年にかけての東海地域での長期的SSEによる明瞭な変化は見いだせないとされている[Yoshikawa, 2003; Yamamoto, 2007].一方で,2013年~2016年にかけての東海地域での長期的SSEについて,ひずみデータのスタッキングにより,すべりの位置の検出とすべりモーメントの推定が行われており[宮岡・木村, 2016:気象庁・気象研究所, 2014~2017],推定されるすべりモーメントの累積はGNSSから推定されたものと同様の傾向を示している.また,2018年から豊後水道で発生した長期的SSEについて,四国に設置された産業技術総合研究所のひずみデータの変化のみから矩形断層モデルの推定が行われている[気象庁, 2018~2020].いずれの場合も,変化が明瞭に見えるひずみ計の成分は限られた観測点の数成分だけである.これが本当にひずみ観測によって長期的SSEをとらえたものであるかという真偽は必ずしも定かではない.
本発表では,GNSSとひずみのデータを同時に使ったABICによるすべり分布のインバージョンを試み,GNSSデータのみから得られているすべり分布との比較を行うとともに,解析に用いられたひずみデータ変化の誤差の評価を行って,その変化が長期的SSEによるものといえるのかどうか検証を行った.GNSSデータでしか捉えることができていない長期的SSEを,異なる観測種目であるひずみデータからも捉えることができれば,GNSSによる解析を裏付けることができるし,ひずみデータのスタッキングなどによる長期的SSEの解析結果の確からしさの根拠ともなり得る.ひずみとGNSSデータを同時に用いたインバージョンの手法には,Gareth et al.(2014)などで用いられている手法を適用した.豊後水道の長期的SSEのインバージョン解析の例を図に示す.これを見ると,GNSSデータのみから時空間インバージョンを行った結果[国土地理院, 2010~2020]と整合的な結果が得られていることが分かる.ひずみ観測データの変化に含まれる誤差は10-11程度であって,ひずみ計にみられる変化は長期的ゆっくりすべりを捉えたものであることが確認できた.