JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地殻変動

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

[SSS14-P11] 神戸市で観測された地震時の断層すべりによる歪変化

*向井 厚志1大塚 成昭2福田 洋一3 (1.福山市立大学都市経営学部、2.元・神戸学院大学人文学部、3.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:歪変化、断層すべり

2018年大阪府北部地震の際,震源から約45km離れた六甲高雄観測室では顕著な歪変化が観測された。その歪変化は地震動の到達直後の数秒間にわたって東北東方向へのステップ状の伸びを示し,最大主歪の方向は,京都大学防災研究所(2018)の震源過程に基づく計算値とほぼ一致した。断層面上の破壊が震源から3km/sで広がっていったと仮定すると,観測された主歪変化の特徴を説明することができる。

神戸市の六甲高雄観測室は万福寺断層を貫く断層破砕帯に位置しており,埋設型石井式3成分歪計等による地殻変動連続観測を実施している。2018年大阪府北部地震(M6.1)では,数分の時定数をもつ歪変化が生じ,北北西方向の伸びが0.1μstrainオーダで現れた。この最大主歪は,震源過程に基づく計算値(+0.03μstrain,N56oE方向)では説明できず,断層破砕帯の収縮および周辺岩盤の間隙水圧上昇に起因するものと推察された(向井他,2018)。このように,同観測室では,地下水流動が歪観測に大きく影響を及ぼしている。しかし,地下水流動が始まる前の地震動到達直後であれば,震源過程に基づく歪ステップが観測されているものと期待される。

六甲高雄観測室に地震動が到達した直後,直線的な歪変化が生じ,0.01μstrainオーダの歪ステップが現れた。その最大主歪,最小主歪および最大主歪の方向は,それぞれ+0.06,-0.03μstrainおよびN61oEであった。これらの観測結果は,震源過程に基づく最大主歪および最小主歪の計算値と比べて約2倍と大きいが,最大主歪の方向は計算値とほぼ一致している。主歪の大きさの差異は破砕帯を含む周辺岩盤の力学的特性に起因しており,観測された歪ステップの大部分は地震時の断層すべりによるものと考えられる。
地震動到達直後に観測された直線的な歪変化は,断層面でのすべりが広がっていく震源過程を反映したものと推察される。実際,断層面上の破壊速度を3km/sとすると,観測された主歪変化の特徴を再現することができる。ただし,主歪変化の観測値と計算値の間には無視できない差異が残る。その原因のひとつとして,周辺岩盤の間隙水圧の寄与が考えられる。本発表では,2011年東北地方太平洋沖地震時に観測された歪ステップに関する解析についても報告する。