[SSS14-P17] 精密水準測量データから推定する2017年御嶽山東山麓でのM5.6地震の断層モデル2
キーワード:御嶽火山、断層モデル、精密水準測量
2017年6月25日、御嶽山東山麓の長野県南部を震源とするM5.6の地震が発生し、最大震度5強(長野県王滝村および長野県木曽町)が観測された。御嶽山の東山麓では、1970年代後半から現在まで群発地震が継続しており、このM5.6 地震の震源は群発地震の震源域に位置する。またこの震源は1984年の長野県西部地震(M6.8)の推定断層の北西端にも位置している。
御嶽山の東山麓には水準路線が設置されており、精密水準測量を繰り返し実施してきた。東山麓には、路線距離38㎞・水準点数98点で構成される桟路線、屋敷野路線、木曽温泉路線、中の湯・御岳ロープウエイ路線が設置され、2017年4月・2018年4月、2019年4月には全路線の測量が実施されている。また、2017年9月にはM5.6 地震を受け、震源に近い一部路線の緊急観測が実施された。これらの観測から、地震を挟む期間と地震後の期間における上下変動を検出した。
地震を挟む半年間と地震後の半年間から検出された上下変動から地震の断層モデルの推定を行った。1枚の矩形断層を仮定し、断層形状は地震発生から1ヵ月分のM>0の地震に対してDD法を用いて決定された合計42個の震源データを使用し断層の形状を決定した。断層の位置(緯度・経度・深さ)の推定にはは、遺伝的アルゴリズムを用いた。遺伝的アルゴリズムを用いた推定では、DD法の震源から推定した値を初期値とし、検出された上下変動を最も良く説明するようにパラメータの探索を行った。推定された最適な矩形断層を12個の小断層に分割し、隣り合う小断層の滑り量は滑らかに変化するという仮定の下、ABICを用い滑り量の推定を行った。
M5.6 の地震を含む期間の2017年4月と9月の測量結果を比較すると、屋敷野路線および木曽温泉路線に隆起が検出された。最大隆起は屋敷野路線のBM213の28mmである(BM16基準)。地震後の2017年9月と2018年4月の観測結果の比較からも、地震時と同じく屋敷野路線および木曽温泉路線に隆起が検出された。最大隆起は屋敷野路線のBM220での5㎜である(BM16基準)。また、2018年4月―2019年4月の観測結果の比較からは、震源近傍での優位な変動は見られなかった。これらの結果より、上下変動は地震後も継続し、半年以内で収束したことが読み取れる。
断層モデルは、余震分布より4㎞×3㎞のほぼ南北走行、Dipが29°の断層を推定した。位置は、地震を挟む半年間の上下変動から、余震分布の中心より1.5㎞南西側の深さ1.7㎞と推定された。小断層の滑り分布は、主として左横ずれを示すが、断層の北部では逆断層の成分を含む。断層滑りから推定されたMwは5.2である。また、地震後の地殻変動を説明する断層モデルとして、断層の位置形状を地震時の値に固定し、地震後の半年間の上下変動から滑り量を推定した結果においても、主として左横ずれ、断層の北部では逆断層の成分を含む滑りのパターンが推定された。
M5.6 の地震を含む期間の上下変動からは、主として左横ずれ断層、断層の北部では逆断層の成分を含む断層滑りが推定された。地震波から推定されたM5.6地震のメカニズムは逆断層であり、本研究から主として推定された横ずれの断層運動とは異なる。しかし本研究の断層モデルにおいても、その震源近傍では逆断層の成分を含む滑りが推定されている。また、M5.6地震の余震には、横ずれのメカニズムの地震も発生していることから、この地域では逆断層だけではなく、横ずれの断層滑りも発生していた可能性が高い。地震波から推定されたメカニズムは逆断層であるため、横ずれの断層滑りはM5.6 の地震をきっかけとして非地震的に発生したと考える。伊藤・松廣(2018)はGNSSの観測結果から、地震波から推定されたメカニズムだけでは水平変動が説明できず、また地震後に定常的な地殻変動速度が変化していることを報告している。これらは、地震後に非地震的な断層滑りが存在したという本研究の結果を支持する。
上記の議論から、御嶽山の東山麓では逆断層のメカニズムのM5.6地震が発生し、その後に横ずれの断層滑りが非地震的に発生したと考える。GNSSと水準測量の結果より、非地震的な滑りは2018年4月までには収束したと考えられる。
御嶽山の東山麓には水準路線が設置されており、精密水準測量を繰り返し実施してきた。東山麓には、路線距離38㎞・水準点数98点で構成される桟路線、屋敷野路線、木曽温泉路線、中の湯・御岳ロープウエイ路線が設置され、2017年4月・2018年4月、2019年4月には全路線の測量が実施されている。また、2017年9月にはM5.6 地震を受け、震源に近い一部路線の緊急観測が実施された。これらの観測から、地震を挟む期間と地震後の期間における上下変動を検出した。
地震を挟む半年間と地震後の半年間から検出された上下変動から地震の断層モデルの推定を行った。1枚の矩形断層を仮定し、断層形状は地震発生から1ヵ月分のM>0の地震に対してDD法を用いて決定された合計42個の震源データを使用し断層の形状を決定した。断層の位置(緯度・経度・深さ)の推定にはは、遺伝的アルゴリズムを用いた。遺伝的アルゴリズムを用いた推定では、DD法の震源から推定した値を初期値とし、検出された上下変動を最も良く説明するようにパラメータの探索を行った。推定された最適な矩形断層を12個の小断層に分割し、隣り合う小断層の滑り量は滑らかに変化するという仮定の下、ABICを用い滑り量の推定を行った。
M5.6 の地震を含む期間の2017年4月と9月の測量結果を比較すると、屋敷野路線および木曽温泉路線に隆起が検出された。最大隆起は屋敷野路線のBM213の28mmである(BM16基準)。地震後の2017年9月と2018年4月の観測結果の比較からも、地震時と同じく屋敷野路線および木曽温泉路線に隆起が検出された。最大隆起は屋敷野路線のBM220での5㎜である(BM16基準)。また、2018年4月―2019年4月の観測結果の比較からは、震源近傍での優位な変動は見られなかった。これらの結果より、上下変動は地震後も継続し、半年以内で収束したことが読み取れる。
断層モデルは、余震分布より4㎞×3㎞のほぼ南北走行、Dipが29°の断層を推定した。位置は、地震を挟む半年間の上下変動から、余震分布の中心より1.5㎞南西側の深さ1.7㎞と推定された。小断層の滑り分布は、主として左横ずれを示すが、断層の北部では逆断層の成分を含む。断層滑りから推定されたMwは5.2である。また、地震後の地殻変動を説明する断層モデルとして、断層の位置形状を地震時の値に固定し、地震後の半年間の上下変動から滑り量を推定した結果においても、主として左横ずれ、断層の北部では逆断層の成分を含む滑りのパターンが推定された。
M5.6 の地震を含む期間の上下変動からは、主として左横ずれ断層、断層の北部では逆断層の成分を含む断層滑りが推定された。地震波から推定されたM5.6地震のメカニズムは逆断層であり、本研究から主として推定された横ずれの断層運動とは異なる。しかし本研究の断層モデルにおいても、その震源近傍では逆断層の成分を含む滑りが推定されている。また、M5.6地震の余震には、横ずれのメカニズムの地震も発生していることから、この地域では逆断層だけではなく、横ずれの断層滑りも発生していた可能性が高い。地震波から推定されたメカニズムは逆断層であるため、横ずれの断層滑りはM5.6 の地震をきっかけとして非地震的に発生したと考える。伊藤・松廣(2018)はGNSSの観測結果から、地震波から推定されたメカニズムだけでは水平変動が説明できず、また地震後に定常的な地殻変動速度が変化していることを報告している。これらは、地震後に非地震的な断層滑りが存在したという本研究の結果を支持する。
上記の議論から、御嶽山の東山麓では逆断層のメカニズムのM5.6地震が発生し、その後に横ずれの断層滑りが非地震的に発生したと考える。GNSSと水準測量の結果より、非地震的な滑りは2018年4月までには収束したと考えられる。