JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

コンビーナ:吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、金木 俊也(京都大学防災研究所)、野田 博之(京都大学防災研究所)

[SSS15-11] 合成石英ガウジを用いた中-高速度摩擦滑りにおける摩擦強度に及ぼす湿度の影響

* 尾上 裕子1堤 昭人1 (1.京都大学理学研究科)

キーワード:摩擦滑り、弱化、ガウジ

高速度での摩擦滑りにおいて岩石や断層ガウジの摩擦強度弱化がおきることが明らかになっている。これらは主に摩擦熱を要因とするが、石英質岩は摩擦熱が発生しない1mm/s付近の低速度下で摩擦強度弱化がおきる(Di Toro et al, 2004)。この石英質岩の摩擦強度弱化の要因として、Goldsby and Tullis [2002]においてGel lubrication modelが提唱されている。これは水和非晶質シリカの層が摩擦面に形成され、その潤滑効果によって弱化がおきるとする説である。しかし、摩擦強度弱化と断層表面のガウジの水和化、非晶質化の関係は未だ明らかではない。
本研究の目的は、石英質岩の摩擦強度弱化のメカニズムを解明することである。二種類の摩擦実験(摩擦滑り実験、Slide-Hold-Slide実験)を行い、様々な湿度条件下での時間依存性摩擦挙動を観察した。
すべての実験は、京都大学の中高速回転式摩擦試験機を使用して実施した。純石英の摩擦挙動を観察するために、試料は合成石英水晶を使用した。実験は、1.5 MPaの一定の垂直応力条件下で、速度は10 µm/s、105 µm/s、1 mm/s、10 mm/s、および105 mm/sで行った。本研究では、水分子の供給量に着目し、湿度を0%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、および80%に設定した。各湿度条件は、湿度計の出力をフィードバック信号として用い、試料装置内部に供給される乾燥空気と加湿空気の流量を調整することで制御した。
摩擦滑り実験の結果、全ての湿度条件下で摩擦弱化挙動(負の速度依存性)が観察されたが、摩擦挙動は湿度条件によって異なった。滑り速度が10 µm/sを超えると、湿度が低下するにつれて摩擦強度が低下する。湿度0〜20%の範囲では、湿度と摩擦係数は概ね正の相関であった。また湿度20%以上においては摩擦係数定常値は概ね一定であり、その値は速度に対して負の依存性をもっていた。
また、Slide-Hold-Slide実験の結果として、時間依存性の摩擦ヒーリングが観察された。ドライ(湿度0%)条件下では、0-100000秒の範囲でヒーリングはおきなかったが、高湿度下においては摩擦ヒーリングはより短い保持時間で発生した。
実験結果から、湿度すなわち水分子の存在が10um/s〜105mm/sの速度領域における摩擦強度に影響することは明らかである。本研究においてガウジの摩擦弱化/強化に対する「水」の影響を示す力学的モデルを提案した。水の存在が化学反応を引き起こし摩擦強度の変化がひきおこされる。