JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] 地震全般

コンビーナ:大林 政行(独立行政法人海洋研究開発機構 火山・地球内部研究センター)、中東 和夫(東京海洋大学)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

[SSS17-P02] 地震動波形から推定したDONET地震計方位の精度向上

*西山 岳洋1矢田 修一郎1中野 優1有吉 慶介1末木 健太朗1堀 高峰1高橋 成実1,2 (1.海洋研究開発機構、2.防災科学技術研究所)

キーワード:海底地震計、南海トラフ、DONET、地震計方位

南海トラフでは平均約90年間隔でM8級の海溝型巨大地震が繰り返し発生しており, 今後30年以内にM8~9程度の地震が発生する確率は南海トラフ全域で70〜80%程度と非常に高い値が報告されている. [1]
これに対し, 地震計を直接海底に設置し, 海底ケーブルによりリアルタイムに地震データを観測する地震・津波観測監視システム(DONET)の建設が行われた. まず, 2010年初頭から2011年7月にかけて熊野灘にDONET1が構築された. [2]
また2014年初頭から2016年3月にかけて紀伊水道沖にDONET2が構築され, 現在, 合計51観測点における観測データが地震・津波の早期検知, 地殻活動の監視と構造解明に利用されている. 更に, 気象庁による緊急地震速報や津波警報の発令, 地方自治体による津波即時予測のためリアルタイムによるデータ利用が行われている.
DONET観測点で得られた地震動波形の解析においては正確な地震計方位の把握が重要である. しかしながら地震計は深海に設置されるため, ROV (Remotely Operated Vehicle)によって意図した方位に精度良く設置したり, 設置後の方位をROV搭載カメラの映像を元に測定することは必ずしも容易ではないという課題があった.
この課題に対し, 中野ほかは2012年に, DONET1の20観測点の地震計に対して以下に示す3種類の方位推定を行った. [3]
(1) 遠地地震の陸上観測記録との相互相関による方位推定
(2) 遠地地震のP波初動の振動方向を用いた方位推定
(3) エアガンによる振動波形を用いた方位推定
中野は, その後さらにDONET2が構築されたこと, DONET1と2の観測網の間のギャップを埋めるために潮岬沖の海域に新たに2観測点が追加されDONET1が計22点となったことを踏まえ, 2017年に再度地震計方位の推定を行った. この際, DONET1のKMA03観測点にて2015年12月にセンサーを改修したこと, DONET2のMRD14観測点にて2017年5月にセンサーを改修したことから, これら観測点の地震計に対し方位の再推定を行っている.[4]
しかしながらDONET2の全観測点の設置が完了したのは, この解析期間の中盤であり, このため, 推定に用いたイベントの少ない観測点では数度程度の誤差があると考えられている. 中野(2017)による方位推定の最終的な標準誤差は1°から2°程度であった. 従い, より長期間のデータを使用することで推定精度を向上していく必要があり, 中野ほか(2012)で行われたP波初動の振動方向を用いた推定などを併用することで, 精度の向上が期待されていた. またこの後DONET1のKMC11観測点にて2018年6月にセンサー改修が行われたため, 地震計方位の再推定が必要となっていた.
本研究では, DONET地震計に対する2011年から2019年までの遠地地震のデータを使用し, 中野ほか(2012)で行われたP 波初動の振動方向を用いた再推定を行った. 今回, 9年間にわたる長期間のイベントを用いて多数の推定を行った結果, 地震計推定方位の標準誤差は, ほぼすべての地震計について1°未満の値が得られた. また, センサー改修の行われたKMC11観測点の地震計方位を含む, 最新の推定方位の値を得ることができたので報告する.

謝辞:本研究はDONET海中部装置の保守業務として実施しました. また, 解析には防災科学研究所のDONETデータを使用させていただきました. 観測網を維持、管理されている皆様に感謝いたします.

[1] 地震調査研究推進本部 地震調査委員会, 長期評価による地震発生確率値の更新について, 2020年1月24日
[2] 川口 勝義. 荒木 英一郎. 金田 義行, DONET-海底におけるリアルタイム長期連続モニタリング手法の確立, Journal of Advanced Marine Science and Technology Society. Vol 17. No.2. pp 125-135. 2011
[3] Masaru Nakano, Takashi Tonegawa, and Yoshiyuki Kaneda. Orientations of DONET seismometers estimated from seismic waveforms. JAMSTEC Rep. Res. Dev., Volume 15, September 2012, 77-89
[4] 中野 優, 地震動波形から推定したDONET2地震計の方位, JpGU-AGU Joint Meeting 2017, STT59-P03