JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT51] 地震観測・処理システム

コンビーナ:前田 宜浩(防災科学技術研究所)

[STT51-03] 位相シフト光干渉法を用いた観測システムの性能評価

*平山 義治1佐藤 峰司1高原 穆之1池田 敏晴1竹内 敬二1谷口 太一1澤田 義博2 (1.白山工業株式会社、2.地震予知総合研究振興会)

キーワード:位相シフト光干渉法、ノイズ観測、PSD

はじめに

位相シフト光干渉法を用いた振動観測システム(以下、光センサシステム)の性能検証のために、東北大学の遠野山崎観測坑道を利用させていただき、約1か月間の連続観測を行い、そのノイズ性能等を検証したので報告する。

光干渉法の原理

我々が採用している光センサシステムは、光ファイバにレーザー光を入射して、その先に取り付けたバネ-質量-ダンパー系の振動子の変位を干渉法によって観測する方法である。具体的には、一部をπ/2ずらした光パルスを分岐させ、一つを基準面、もう一つを振り子の振動面で反射させて片方を適切に遅延させて干渉させることにより、振動面の変位を測定する(図1)。振り子は地動入力を受けて強制振動をするため、振り子の固有振動数よりも低周波数領域で検出される振幅は地動の加速度に比例することから加速度計となる(ref. 1, 2)。

観測

山崎観測点は、遠野地震観測所周辺にある群列地震観測網のうち、防災科研もF-netの遠野山崎(コードTYS、緯度39.3772N、経度141.5932E、標高346m)として共同利用している花崗岩質の観測坑道である。2019年12月17日に遠野山崎観測点に設置して観測を開始し、2020年1月16日まで連続観測を行ったのちに撤収した。遠野山崎観測点は全長約50mのまっすぐな坑道で、入り口入ってすぐに観測室、途中3か所扉あり、一番奥にセンサ室がある。光送受信装置は観測室に、3成分光センサ3セットをセンサ室に設置し、観測室と光センサを結ぶ光ケーブルは側溝に通した。センサの固有振動数は24Hzが2セットと100Hzが1セットである。比較のため、サーボ加速度計(日本航空電子製JA-40GA)を搭載している白山工業製JU410微動計を2019年12月17日から19日までの期間、センサ室に併設して観測を行った。また、センサ室には防災科研F-netのSTS-2が設置されており、この記録とも比較した。

結果

1) サーボ加速度計との比較

静かな夜中で地震が発生していない時間帯のデータを用いてノイズスペクトルを求め、JU410の記録と比較した。サンプリング周波数はいずれも100Hzである。光センサシステムは0.1Hzから30Hzのバンドパスフィルタをかけている。JU410のゲイン設定は×5、最大測定範囲は±2G、カットオフ40%の最小位相フィルタをかけている。図2は2019年12月18日午前1時から午前1時30分までの30分間の記録を使用した、固有振動数24Hzの光センサとJU410のPSDのグラフである。サーボ加速度計よりも光センサシステムの方が、ノイズレベルが低いことがわかる。

2) STS-2との比較

図3は2020年1月16日午前0時30分から午前1時までの30分間のデータを使用したPSDのグラフである。F-netのSTS-2の記録は微分して加速度に変換している。図3より、0.13Hz程度から20Hz程度の範囲では、光センサシステムのノイズレベルはSTS-2のノイズレベルとほぼ一致していることがわかる。すなわち、この周波数帯域において、光センサシステムは遠野の地動ノイズを検出していると判断される。

今後の課題

光センサは検出器に電子部品を持たないため、高温環境下でも動作可能であり、短期間の高温試験では200℃程度まで正常動作できることを確認している。今後は性能の耐久性の確認が必要と考える。

謝辞

東北大学地震・噴火予知研究観測センターには遠野山崎観測点の使用許可をいただきました。東北大学遠野地震観測所の河野様には現地で多大なサポートをいただきました。遠野山崎観測点のF-netデータは防災科研Hi-netのWEBページよりダウンロードして使用させていただきました。ここに記して感謝いたします。

参考文献

1) Yoshida et. al., Real-time displacement measurement system using phase-shifted optical pulse interferometry: Application to a seismic observation system, Jpn. J. Appl. Phys., vol.55 (2016) 022701.
2) Tsutsui et al., Feasibility Study on a Multi-Channeled Seismometer System with Phase-Shifted Optical Interferometry for Volcanological Observations, J. Disaster Res., vol.14 (2019) pp. 592-603.