[STT53-03] 無人ヘリコプターを用いた登別火山の空中調査技術の工夫点
キーワード:無人ヘリコプター、火山
1.はじめに:
火山活動時の立入規制範囲内の調査において無人ロボット技術の応用が有効であることから,産官学連携のもと北海道開発局所有の無人小型ヘリを用いて樽前火山、有珠火山及び登別火山にて調査技術の開発を実施している.これまで,温泉水の採水,火山噴出物サンプリングのほか、空中磁気測定,火山ガス濃度計測などの調査を試み,いずれも実用可能であることを確認している.ここでは、空中調査技術の工夫点として、高所作業車を用いたアンテナ設置方法、空中からの火山噴出物サンプリング方法及び火山灰厚計測方法について使用機材や具体的な方法について論じる。
2.無人小型ヘリの諸元及び調査地:
本調査で用いた機体は、北海道開発局所有の自律型無人ヘリコプター(ヤマハ RMAX-G1)である。基地局と操作系無線を接続した状態で飛行しており、飛行経路の変更や無人ヘリ搭載カメラの操作、センサーをつりさげるウインチの上げ下げの操作等を随時行うことができる。最大飛行時間は約90分、飛行範囲は基地局から半径最大5km、最大搭載量は標高0m、気温20℃の場合10kgまで可能であり、5kg程度の観測機器や装置であれば標高1,300m程度まで調査した実績を有する。
本調査は登別火山を調査地とし、噴火警戒レベル上昇時に立入規制範囲外となる上登別付近の標高578.7mの地点を離発着場所とし、火山噴出物サンプリング及び火山灰厚観測については2.0km離れた日和山北側斜面まで飛行し、空中から調査を実施している。
3.高所作業車を用いた無線交信:
基地局と小型無人ヘリとの無線交信は、操作系は2.4GHz帯データ通信、カメラ映像についてはアナログ1.2GHz帯を用いている。両電波とも見通しを確保する必要があり、特に操作系が途切れた場合、自動帰還の機能が作動し、調査が中断される。樹木については遮断されないこともあるが、本調査では高所作業車を用いて両アンテナを樹木帯より高所に設置し、完全な見通しを確保して調査を実施している。高所作業はいわゆる
「スーパーデッキ」と呼ばれるタイプで、作業台が2.5m×1.5m程度のものである。これを用いることでアンテナ操作者とヘリの目視監視員の2名を高所作業につかせ、アンテナを手すりに固定することができる。 本調査中においても無線通信が途切れ、自動帰還機能が作動したことがあるが、高所作業車のデッキ及びアンテナ方向の微調整を繰り返すことにより、無線交信を再開させ、規定の飛行ルートのフライトに成功している。また、人家等が隣接している箇所であっても操縦不能状態で人家等の上空を飛行することなく、実用的に運航できている。
4.火山噴出物サンプリング方法:
火山噴出物サンプリングについては、対地約50m〜60mの高さでホバリングを行い、吊り下げたサンプラーをウインチで降下させ、火山噴出物を採取している。あらかじめ目標地点に2m×2m四方のブルーシートを固定し、その上に火山灰を数 cmの厚さで設置した。設置した火山灰は日和山周辺に見られる平均粒径1㎝程度の軽石(Kt-1テフラ)のケースと桜島周辺で採取した平均粒径0.5㎜程度の細粒火山灰のケースを試験した。サンプラーはボールタイプ及びバケットタイプの2種類の形状を試した。その結果、ボールタイプは両面テープに軽石も細粒火山灰もまんべんなく付着させることができ、バケットタイプでは軽石が124gに対し、細粒火山灰は190gと優位性が見られた。火山噴出物の粒径に応じてサンプラーを使い分けることが有効である。
5.火山灰厚計測方法:
火山灰厚計測方法については、上空から火山灰厚を識別できるマーカーを噴火前に定点に設置しておき、降灰時にそのマーカーを上空から撮影することで計測するという想定で、試験的に飛行を行った。マーカーは堤ほか2019を参考に、高さ・形状・色が異なる指標杭を用いることとし、高さを10㎜、20㎜、30㎜としたところ、厚さ10㎜以上堆積しているかどうかが識別可能と分かった。
6.おわりに:
無人ヘリ等UAVを用いた調査を実施するには、ここであげた工夫点をノウハウとして所有している必要があり、また調査する者も定期的に訓練を実施することが重要である。
引用文献
堤宏徳,岡崎敏,山本陽子,上條孝徳,田方智,関本あすみ;UAV を用いた火山灰堆積状況および浸透能の概略把握の試み(その2);2019年度砂防学会研究発表会概要集
火山活動時の立入規制範囲内の調査において無人ロボット技術の応用が有効であることから,産官学連携のもと北海道開発局所有の無人小型ヘリを用いて樽前火山、有珠火山及び登別火山にて調査技術の開発を実施している.これまで,温泉水の採水,火山噴出物サンプリングのほか、空中磁気測定,火山ガス濃度計測などの調査を試み,いずれも実用可能であることを確認している.ここでは、空中調査技術の工夫点として、高所作業車を用いたアンテナ設置方法、空中からの火山噴出物サンプリング方法及び火山灰厚計測方法について使用機材や具体的な方法について論じる。
2.無人小型ヘリの諸元及び調査地:
本調査で用いた機体は、北海道開発局所有の自律型無人ヘリコプター(ヤマハ RMAX-G1)である。基地局と操作系無線を接続した状態で飛行しており、飛行経路の変更や無人ヘリ搭載カメラの操作、センサーをつりさげるウインチの上げ下げの操作等を随時行うことができる。最大飛行時間は約90分、飛行範囲は基地局から半径最大5km、最大搭載量は標高0m、気温20℃の場合10kgまで可能であり、5kg程度の観測機器や装置であれば標高1,300m程度まで調査した実績を有する。
本調査は登別火山を調査地とし、噴火警戒レベル上昇時に立入規制範囲外となる上登別付近の標高578.7mの地点を離発着場所とし、火山噴出物サンプリング及び火山灰厚観測については2.0km離れた日和山北側斜面まで飛行し、空中から調査を実施している。
3.高所作業車を用いた無線交信:
基地局と小型無人ヘリとの無線交信は、操作系は2.4GHz帯データ通信、カメラ映像についてはアナログ1.2GHz帯を用いている。両電波とも見通しを確保する必要があり、特に操作系が途切れた場合、自動帰還の機能が作動し、調査が中断される。樹木については遮断されないこともあるが、本調査では高所作業車を用いて両アンテナを樹木帯より高所に設置し、完全な見通しを確保して調査を実施している。高所作業はいわゆる
「スーパーデッキ」と呼ばれるタイプで、作業台が2.5m×1.5m程度のものである。これを用いることでアンテナ操作者とヘリの目視監視員の2名を高所作業につかせ、アンテナを手すりに固定することができる。 本調査中においても無線通信が途切れ、自動帰還機能が作動したことがあるが、高所作業車のデッキ及びアンテナ方向の微調整を繰り返すことにより、無線交信を再開させ、規定の飛行ルートのフライトに成功している。また、人家等が隣接している箇所であっても操縦不能状態で人家等の上空を飛行することなく、実用的に運航できている。
4.火山噴出物サンプリング方法:
火山噴出物サンプリングについては、対地約50m〜60mの高さでホバリングを行い、吊り下げたサンプラーをウインチで降下させ、火山噴出物を採取している。あらかじめ目標地点に2m×2m四方のブルーシートを固定し、その上に火山灰を数 cmの厚さで設置した。設置した火山灰は日和山周辺に見られる平均粒径1㎝程度の軽石(Kt-1テフラ)のケースと桜島周辺で採取した平均粒径0.5㎜程度の細粒火山灰のケースを試験した。サンプラーはボールタイプ及びバケットタイプの2種類の形状を試した。その結果、ボールタイプは両面テープに軽石も細粒火山灰もまんべんなく付着させることができ、バケットタイプでは軽石が124gに対し、細粒火山灰は190gと優位性が見られた。火山噴出物の粒径に応じてサンプラーを使い分けることが有効である。
5.火山灰厚計測方法:
火山灰厚計測方法については、上空から火山灰厚を識別できるマーカーを噴火前に定点に設置しておき、降灰時にそのマーカーを上空から撮影することで計測するという想定で、試験的に飛行を行った。マーカーは堤ほか2019を参考に、高さ・形状・色が異なる指標杭を用いることとし、高さを10㎜、20㎜、30㎜としたところ、厚さ10㎜以上堆積しているかどうかが識別可能と分かった。
6.おわりに:
無人ヘリ等UAVを用いた調査を実施するには、ここであげた工夫点をノウハウとして所有している必要があり、また調査する者も定期的に訓練を実施することが重要である。
引用文献
堤宏徳,岡崎敏,山本陽子,上條孝徳,田方智,関本あすみ;UAV を用いた火山灰堆積状況および浸透能の概略把握の試み(その2);2019年度砂防学会研究発表会概要集