JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC44] 火山の熱水系

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)、大場 武(東海大学理学部化学科)

[SVC44-P01] 南部沖縄トラフ多良間海丘で発見された高温熱水活動域の熱水チムニーの鉱物組成と熱水の地球化学的研究

*山中 寿朗1横田 瑛里1岡村 慶2野口 拓郎2土岐 知弘3角皆 潤4大西 雄二5牧田 寛子1 (1.東京海洋大学、2.高知大学、3.琉球大学、4.名古屋大学、5.京都大学)

キーワード:海底熱水活動、多良間海丘、南部沖縄トラフ

沖縄トラフ南部、多良間島の北約60kmの海底に位置する多良間海丘において、2017年8月、有人潜水艇「しんかい6500」の潜航調査により、300℃を超える高温の熱水噴出孔が水深1,840m付近の海底についに発見され、YZサイトと名付けられた。この海域では2009年に実施された潜航調査により山頂付近から周囲の海水温度に比べ約20℃高い温度の熱水の湧出が確認され、その湧水と関連すると考えられる鉄酸化物を主体とした堆積物が認められていたが(Foxサイト)、高温熱水の噴出は確認されていなかった。この海丘は南部沖縄トラフの主たるrifting zoneである八重山海底地溝のやや南に位置し、西表島北北東海底火山にあたる石垣海丘群に東側延長にあたる島弧火山列の一つと推定される。2017年の潜航調査では、同サイトから、熱水およびチムニーの採取が行われた。本発表では得られたチムニー試料の鉱物組成や元素組成と、熱水の地球化学的特徴について報告する。

チムニー試料は高温の熱水を噴出中の活動中のもので、「しんかい6500」のマニュピレーターにより採取された。採取時に小さな破片になって回収された試料を、偏光顕微鏡観察およびXRD、EPMAを用いて鉱物同定および元素組成分析を行った。チムニー内側の熱水流路の周囲と考えられるチムニー片は閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、方鉛鉱などの硫化物に富み、黄銅鉱も少量見られた。海水に面しているチムニー外側と推定されるチムニー片は、重晶石が主体となっており、硫化物は閃亜鉛鉱、黄鉄鉱と少量の方鉛鉱が含まれていた。また、重晶石を主要構成鉱物とし、ヒ素硫化物および非晶質シリカからなるチムニー片試料もあった。多良間海丘YZサイトのチムニー試料から得られたこれらの特徴は、沖縄トラフの他の熱水系で採取されたチムニー試料の分析結果と大きな違いは見られなかった。
 一方、YZサイトのチムニーから採取された高温熱水試料は採取時の最高温度は310℃であった。Foxサイトからは酸化鉄を含む堆積物の間隙水や大量採水器により低温熱水試料が得られた。FoxサイトおよびYZサイトで採取された試料の化学組成は、いずれも海水を端成分とする直線上にプロットされたが、ともに推定される熱水端成分組成は異なり、それぞれ別の熱水リザーバーの存在を示唆するものであった。