[SVC45-30] 光ファイバーとDASの記録を用いた吾妻山の火山性地震の震源決定
キーワード:光ファイバー、DAS、火山性地震
通信用に開発された光ファイバー内を伝播する光は、ファイバー内の不純物や欠陥などにより後方散乱される。その散乱波を利用したDistributed Acoustic Sensing(DAS)systemを用いることで、ファイバーに生じた歪みの時間変化を数メートルから数十メートル間隔で測定することができる。この超高密度で地震波形を記録できるこのシステムを、吾妻山の自然地震の観測に利用した。今回、記録された火山性地震の震源決定を行ったので報告する。
光ファイバーケーブルは磐梯吾妻スカイラインの道路に沿って、土湯温泉ゲートから浄土平までの総長14.2kmにわたり敷設されている。道路はほぼ南北方向に伸びているが、その中程と南側でつづら折りとなっている箇所もある。ケーブルは、深さ50cmほどに埋設された管内に設置されている。2019年7月4日から、南端にある土湯温泉ゲートに、シュルンベルジェ社のheterodyne Distributed Vibration Sensing (hDVS)を設置し、サンプリング周波数1000Hz、サンプル箇所の間隔10mで約3週間の連続観測を行った。今回、2019年7月4日21時に発生した火山性地震を対象に、振幅法および位相を利用した震源決定を行った。
振幅法では、まず火山性地震に2-4Hzのフィルターをかけ最大振幅を測定した。ケーブル沿いの地盤は増幅特性に違いがあると考えられることから、東北地域で発生したやや規模の大きな構造性地震の後続波の振幅比を使い、火山性地震の最大振幅の補正を行った。その結果、震源域と想定される、浄土平からの水平距離に反比例するような振幅空間分布が得られた。微動波形はS波が卓越すると仮定し、波の位相速度2km/s 、減衰パラメータQ=50として、グリッドサーチで観測量と計算値を比較した。その結果、残差の小さい領域は吾妻小富士の南から浄土平にかけての深さ0-1 km付近に求められた。次に位相情報を使って震源決定を行った。隣接する観測位置での歪み波形記録のクロススペクトルをもとにして着信時差を求める。今回、10m、20m、30m間隔で2つの観測箇所を選び、それらのクロススペクトルから着信時差を求め、データとした。グリッドサーチを行った結果、大穴火口の南西側付近の極浅部に観測値と計算値の差が小さくなる領域があることがわかった。以上の2つの方法は必ずしも同地点で残差が小さくはならなかったことから、両者の残差を合算し、その値が小さくなる領域を震源域と考える。その結果、震源域は大穴火口のやや南の深さ0-1kmと推定された。この位置は吾妻山で頻繁に発生する火山性地震の震源域や膨張域に近い。
吾妻山の光ファイバーケーブルは、震源域から南北方向に線状に伸び、また震源域も囲まないなど、震源決定には適した配置とはなっていない。しかしながら、超高密度多点のデータから、火山性微動の震源を適切な位置に決められることが明らかとなった。
謝辞
国土交通省の光ファイバーを借用した。観測に当たって、国土交通省東北地方整備局福島河川国道事務所の方々に便宜を図っていただいた。
光ファイバーケーブルは磐梯吾妻スカイラインの道路に沿って、土湯温泉ゲートから浄土平までの総長14.2kmにわたり敷設されている。道路はほぼ南北方向に伸びているが、その中程と南側でつづら折りとなっている箇所もある。ケーブルは、深さ50cmほどに埋設された管内に設置されている。2019年7月4日から、南端にある土湯温泉ゲートに、シュルンベルジェ社のheterodyne Distributed Vibration Sensing (hDVS)を設置し、サンプリング周波数1000Hz、サンプル箇所の間隔10mで約3週間の連続観測を行った。今回、2019年7月4日21時に発生した火山性地震を対象に、振幅法および位相を利用した震源決定を行った。
振幅法では、まず火山性地震に2-4Hzのフィルターをかけ最大振幅を測定した。ケーブル沿いの地盤は増幅特性に違いがあると考えられることから、東北地域で発生したやや規模の大きな構造性地震の後続波の振幅比を使い、火山性地震の最大振幅の補正を行った。その結果、震源域と想定される、浄土平からの水平距離に反比例するような振幅空間分布が得られた。微動波形はS波が卓越すると仮定し、波の位相速度2km/s 、減衰パラメータQ=50として、グリッドサーチで観測量と計算値を比較した。その結果、残差の小さい領域は吾妻小富士の南から浄土平にかけての深さ0-1 km付近に求められた。次に位相情報を使って震源決定を行った。隣接する観測位置での歪み波形記録のクロススペクトルをもとにして着信時差を求める。今回、10m、20m、30m間隔で2つの観測箇所を選び、それらのクロススペクトルから着信時差を求め、データとした。グリッドサーチを行った結果、大穴火口の南西側付近の極浅部に観測値と計算値の差が小さくなる領域があることがわかった。以上の2つの方法は必ずしも同地点で残差が小さくはならなかったことから、両者の残差を合算し、その値が小さくなる領域を震源域と考える。その結果、震源域は大穴火口のやや南の深さ0-1kmと推定された。この位置は吾妻山で頻繁に発生する火山性地震の震源域や膨張域に近い。
吾妻山の光ファイバーケーブルは、震源域から南北方向に線状に伸び、また震源域も囲まないなど、震源決定には適した配置とはなっていない。しかしながら、超高密度多点のデータから、火山性微動の震源を適切な位置に決められることが明らかとなった。
謝辞
国土交通省の光ファイバーを借用した。観測に当たって、国土交通省東北地方整備局福島河川国道事務所の方々に便宜を図っていただいた。