[SVC47-P01] 米国メデイスン・レイク火山の溶岩樹型と溶岩チューブ洞窟から得られる溶岩降伏値
キーワード:溶岩樹型、溶岩チューブ洞窟、溶岩降伏値、溶岩流
1.はじめに:カリフォルニア州北部にあるメディスン・レイク火山は、過去5200年の間に9回噴火しているカスケード山脈最大の火山である。この楯状火山の北東の山腹には、約1万年前に流れた溶岩流上に形成された溶岩樹型群や、3万から4万年前に形成された溶岩洞窟が数多く保存されているラバ・ベッズ国定公園がある1,2,3)。これらの樹型の深さと溶岩チューブ洞窟の高さを計測し、溶岩流の降伏値を推定した。なお、傾斜角度は地質図の等高線から読み取り概略推定した。
2.溶岩樹型:溶岩樹型群は標高2000mにおけるSiO2:51.9wt%,12,330 yr B.Pのbtm(basaltic tree mold)溶岩流に多く存在し、その直径は15cmから90cmの範囲にわたるものである。古い溶岩流なのでほとんどの縦型樹型底に堆積物が蓄積されているが、C14年代計測のための炭素採掘4)のため堆積物を取り除いてあるbtm-TM-4.2m縦型樹型(樹型位置:N41.63854, W121.60744、直径:0.79mx0.91m、深さ:4.2m)の深さを溶岩厚さHとして、溶岩流をビンガム流体とした溶岩流停止条件fB=H(ρg sinα)を用いて見かけの溶岩降伏値fBを求めた。重力加速度はg=980cm/s2、密度はρ=2.5g/cm3を用いた。Fig.1にその樹型の写真を示す。Table.1に示すように傾斜度9.5°から見かけの降伏値:1.8x104 Paを得る。SiO2:51.9wt%の溶岩としては高い値を示しており、溶岩膨張のためと考えられる。
3.溶岩チューブ洞窟:溶岩チューブ洞窟の高さについてはSiO2:53.0wt%,12,260 yr B.P のbvc(basaltic valentine cave)溶岩流にあるValentine Caveと, SiO2:52.3wt%,40Ar/39Ar age/36±16 ka のbmc(basaltic mammoth crater)溶岩流にあるSentinel Caveについて計測した。Fig.2,及びFig.3にそれぞれの洞窟内部の写真を示す。溶岩降伏値fBは傾斜円管内重力流の流動限界条件:fB=H(ρg sinα)/4から求めた。Table.2に溶岩チューブ洞窟の高さH,傾斜角度αから得られた溶岩降伏値を示す。得られた降伏値は1.54x103から2.8x103 Paの範囲にあり降伏値として妥当な値である。
4.まとめ:樹型深さ(溶岩厚さ)から得られた見かけの降伏値は溶岩チューブ洞窟高さから得られた降伏値値の6倍から12倍の値を示している。btm溶岩流には溶岩チューブは発見されていないが内部で溶岩膨張を起こしsimple flowからinflated flowに遷移してることを示している。一方bvc溶岩流およびbmc溶岩流は溶岩厚さが厚いため溶岩樹型は埋没して失われたとみられるが、やはり溶岩流は溶岩膨張を経て溶岩チューブ洞窟が内部に形成されたものと考えられる。
謝辞:米国地質調査所(USGS)のJ.Donnelly-Nolan博士には樹型の位置情報と樹型発掘状況を、J.Tinsley博士には現地で地質学的情報を教授していただき深く感謝いたします。
参考文献:
1)Johnston, D.A., and Donnelly–Nolan, J.M. eds(1981)., Guides to some volcanic terranes in Washington, Idaho, Oregon, and northern California: US Geological Survey Circular 838, p143
2)Katie Keller Lynn(2014): Lava Beds National Monument Geologic Resources Inventory Report Natural Resource Report NPS/NRSS/GRD/NRR—2014/804 p22-23
3)http://geotripper.blogspot.com/2010/01/other-california-if-tree-falls-in.html
4)Private communication with Donnelly–Nolan, J.M.,:Jul 16, 2018, on the locations of the carbon-14 samples collected from large tree molds in map units btm, bvc, and bbr.
5)Donnelly–Nolan, J.M (2010):Geologic Map of Medicine Lake Volcano, Northern California:Pamphlet to accompany Scientific Investigations Map 2927,USGS
2.溶岩樹型:溶岩樹型群は標高2000mにおけるSiO2:51.9wt%,12,330 yr B.Pのbtm(basaltic tree mold)溶岩流に多く存在し、その直径は15cmから90cmの範囲にわたるものである。古い溶岩流なのでほとんどの縦型樹型底に堆積物が蓄積されているが、C14年代計測のための炭素採掘4)のため堆積物を取り除いてあるbtm-TM-4.2m縦型樹型(樹型位置:N41.63854, W121.60744、直径:0.79mx0.91m、深さ:4.2m)の深さを溶岩厚さHとして、溶岩流をビンガム流体とした溶岩流停止条件fB=H(ρg sinα)を用いて見かけの溶岩降伏値fBを求めた。重力加速度はg=980cm/s2、密度はρ=2.5g/cm3を用いた。Fig.1にその樹型の写真を示す。Table.1に示すように傾斜度9.5°から見かけの降伏値:1.8x104 Paを得る。SiO2:51.9wt%の溶岩としては高い値を示しており、溶岩膨張のためと考えられる。
3.溶岩チューブ洞窟:溶岩チューブ洞窟の高さについてはSiO2:53.0wt%,12,260 yr B.P のbvc(basaltic valentine cave)溶岩流にあるValentine Caveと, SiO2:52.3wt%,40Ar/39Ar age/36±16 ka のbmc(basaltic mammoth crater)溶岩流にあるSentinel Caveについて計測した。Fig.2,及びFig.3にそれぞれの洞窟内部の写真を示す。溶岩降伏値fBは傾斜円管内重力流の流動限界条件:fB=H(ρg sinα)/4から求めた。Table.2に溶岩チューブ洞窟の高さH,傾斜角度αから得られた溶岩降伏値を示す。得られた降伏値は1.54x103から2.8x103 Paの範囲にあり降伏値として妥当な値である。
4.まとめ:樹型深さ(溶岩厚さ)から得られた見かけの降伏値は溶岩チューブ洞窟高さから得られた降伏値値の6倍から12倍の値を示している。btm溶岩流には溶岩チューブは発見されていないが内部で溶岩膨張を起こしsimple flowからinflated flowに遷移してることを示している。一方bvc溶岩流およびbmc溶岩流は溶岩厚さが厚いため溶岩樹型は埋没して失われたとみられるが、やはり溶岩流は溶岩膨張を経て溶岩チューブ洞窟が内部に形成されたものと考えられる。
謝辞:米国地質調査所(USGS)のJ.Donnelly-Nolan博士には樹型の位置情報と樹型発掘状況を、J.Tinsley博士には現地で地質学的情報を教授していただき深く感謝いたします。
参考文献:
1)Johnston, D.A., and Donnelly–Nolan, J.M. eds(1981)., Guides to some volcanic terranes in Washington, Idaho, Oregon, and northern California: US Geological Survey Circular 838, p143
2)Katie Keller Lynn(2014): Lava Beds National Monument Geologic Resources Inventory Report Natural Resource Report NPS/NRSS/GRD/NRR—2014/804 p22-23
3)http://geotripper.blogspot.com/2010/01/other-california-if-tree-falls-in.html
4)Private communication with Donnelly–Nolan, J.M.,:Jul 16, 2018, on the locations of the carbon-14 samples collected from large tree molds in map units btm, bvc, and bbr.
5)Donnelly–Nolan, J.M (2010):Geologic Map of Medicine Lake Volcano, Northern California:Pamphlet to accompany Scientific Investigations Map 2927,USGS