[SVC47-P04] 北海道東部,屈斜路火山40 ka噴火 (KpⅠ)の層序と噴火様式
キーワード:屈斜路カルデラ、大規模火砕流、テフラ層序、マグマ水蒸気噴火
屈斜路火山は,北海道東部に位置し,日本最大のカルデラ(26×20 km)を有する.約400kaから古梅溶結凝灰岩(FWT),屈斜路火砕流Ⅷ~Ⅰ(KpⅧ~KpⅠ)の大規模火砕流を噴出し,現在のカルデラを形成した.(勝井・佐藤,1963;長谷川ほか,2011).このうち最大規模の噴火は約120 kaのKpⅣ(175㎦)で,この噴火によって屈斜路カルデラの大枠が形成された(Hasegawa et al.,2016).最新のKpⅠ(40 ka)はKpⅣに次ぐ規模(125㎦)で,大規模なマグマ水蒸気爆発を起こした(奥村,1991,1996)が,詳しい噴出物層序,噴火様式および推移については明らかではない.
KpⅠの噴火推移を検討するために,新たな地質調査を実施し,噴出物の記載と層序の細分化を行った.細分した層序に基づき,粒度分析および構成物分析を実施し,噴火様式の変遷について検討した.粒度分析は,電磁ふるいを用いて-5φ~4φの範囲を1φ間隔で行い,4φ以上の粒子については,レーザー回析/散乱式粒子径分布測定器を用いて粒径頻度を求め,重量換算した.構成物分析は32 mm~1 mmの全粒子を肉眼観察で分類,重量%を求めた.
地質調査の結果,KpⅠを下位からUnit 1~Unit 9に細分した.Unit 1,2は屈斜路カルデラ北東約30 kmの範囲に分布する.Unit 1は黄白色~白色,礫支持の軽石層で,細礫サイズの軽石・石質岩片が主体であり,遊離結晶およびシルト質火山灰も少量含む.Unit 2は白色のシルト質火山灰層で,火山豆石および遊離結晶を大量に含む.Unit 3,4はそれぞれ黄白色~白色の軽石層,白色のシルト質火山灰層で,下位のUnit 1,2と類似した層相を示すが,Unit 1,2より広範囲に分布する.Unit 5は白色,礫支持の軽石層で,Unit 1,3に含まれる軽石よりも粗粒で発泡が良く,まれにカリフラワー状軽石も含む.Unit 6は火山豆石を含む白色のシルト質火山灰層で,層厚は最大で2 m以上と厚く,道東全域に分布する.その層相・分布から,クッチャロ庶路火山灰(Kc-Sr : 町田・新井, 2003)に相当すると思われる.Unit 7は白色,非溶結の軽石流堆積物で,カルデラ北東~西方向を中心に広く分布する.本ユニットはKpⅠ噴出物の中では最大規模で,層厚は2~30 mほどである.軽石の発泡度は様々で,しばしばカリフラワー状軽石も含む.基底部には,石質岩片・遊離結晶の濃集層(Ground layer : Walker et al.,1981)が認められ,Unit 6以下には認められない新鮮な安山岩質岩片を含む.Unit 8は白色のシルト質火山灰層で,細礫サイズの軽石も少量含む.Unit 9は白色,非溶結の軽石流堆積物である.Unit 8,9の分布は屈斜路カルデラ北方向に限られる.遊離結晶の鉱物組み合わせは,全ユニットに共通して斜長石,輝石,かんらん石であるが,軽石にはかんらん石が少量,あるいは含まれない場合がある.
粒度分布は,Unit 1~3はバイモーダルな分布を示し,粗粒側のピークは-1~0φであるが,細粒側のピークは5φと共通する.一方で,Unit 4~6はユニモーダルな分布を示す.これらは,上位ユニットほど淘汰が良くなる.4φ以上の細粒粒子は,20~45 wt%を占めるが,Unit 5のみ,4 wt%と細粒粒子に乏しいことで特徴づけられる.構成物量比は,Unit 1,2,3では石質岩片が,それぞれ,26 wt%,38 wt%,37 wt%含まれる.Unit 4,5,6では石質岩片がそれぞれ,13 wt%,3 wt%,11 wt%である.
Unit 1~3では,共通して極細粒粒子 (-5φ)にピークが認められることから,マグマの水冷破砕により,細粒粒子が生成されたと考えられる.さらに,これらのユニットは淘汰が悪く,石質岩片を多く含むという特徴から,水蒸気を含んだ不安定な状態で,火道の開口が生じていたことが示唆される.Unit 4~6では,下位ユニットよりも分布が広くなり,石質岩片の量が減少することから,火道が安定し,高い噴煙柱を形成したと考えられる.Unit 6,7はKpⅠの体積の大部分を占めることから,噴火の最盛期であったと考えられる.Unit 7では,石質岩片の種類が明瞭に変化することから,カルデラ形成に関与した火口の拡大,あるいは移動が示唆される.その後,比較的小規模なUnit 8,9のフェーズを経てKpⅠの爆発的噴火は終息したと考えられる.
引用:勝井・佐藤,1963,5万分の1地質図幅「藻琴山」;長谷川ほか,2011.地質雑,117, 686 – 699;Hasegawa et al., 2016, JVGR, 321, 58 – 72 ; 奥村晃史,1991,第四紀研究,30,379-390 ; 奥村晃史 (1996) 第四紀露頭集,p.25.
KpⅠの噴火推移を検討するために,新たな地質調査を実施し,噴出物の記載と層序の細分化を行った.細分した層序に基づき,粒度分析および構成物分析を実施し,噴火様式の変遷について検討した.粒度分析は,電磁ふるいを用いて-5φ~4φの範囲を1φ間隔で行い,4φ以上の粒子については,レーザー回析/散乱式粒子径分布測定器を用いて粒径頻度を求め,重量換算した.構成物分析は32 mm~1 mmの全粒子を肉眼観察で分類,重量%を求めた.
地質調査の結果,KpⅠを下位からUnit 1~Unit 9に細分した.Unit 1,2は屈斜路カルデラ北東約30 kmの範囲に分布する.Unit 1は黄白色~白色,礫支持の軽石層で,細礫サイズの軽石・石質岩片が主体であり,遊離結晶およびシルト質火山灰も少量含む.Unit 2は白色のシルト質火山灰層で,火山豆石および遊離結晶を大量に含む.Unit 3,4はそれぞれ黄白色~白色の軽石層,白色のシルト質火山灰層で,下位のUnit 1,2と類似した層相を示すが,Unit 1,2より広範囲に分布する.Unit 5は白色,礫支持の軽石層で,Unit 1,3に含まれる軽石よりも粗粒で発泡が良く,まれにカリフラワー状軽石も含む.Unit 6は火山豆石を含む白色のシルト質火山灰層で,層厚は最大で2 m以上と厚く,道東全域に分布する.その層相・分布から,クッチャロ庶路火山灰(Kc-Sr : 町田・新井, 2003)に相当すると思われる.Unit 7は白色,非溶結の軽石流堆積物で,カルデラ北東~西方向を中心に広く分布する.本ユニットはKpⅠ噴出物の中では最大規模で,層厚は2~30 mほどである.軽石の発泡度は様々で,しばしばカリフラワー状軽石も含む.基底部には,石質岩片・遊離結晶の濃集層(Ground layer : Walker et al.,1981)が認められ,Unit 6以下には認められない新鮮な安山岩質岩片を含む.Unit 8は白色のシルト質火山灰層で,細礫サイズの軽石も少量含む.Unit 9は白色,非溶結の軽石流堆積物である.Unit 8,9の分布は屈斜路カルデラ北方向に限られる.遊離結晶の鉱物組み合わせは,全ユニットに共通して斜長石,輝石,かんらん石であるが,軽石にはかんらん石が少量,あるいは含まれない場合がある.
粒度分布は,Unit 1~3はバイモーダルな分布を示し,粗粒側のピークは-1~0φであるが,細粒側のピークは5φと共通する.一方で,Unit 4~6はユニモーダルな分布を示す.これらは,上位ユニットほど淘汰が良くなる.4φ以上の細粒粒子は,20~45 wt%を占めるが,Unit 5のみ,4 wt%と細粒粒子に乏しいことで特徴づけられる.構成物量比は,Unit 1,2,3では石質岩片が,それぞれ,26 wt%,38 wt%,37 wt%含まれる.Unit 4,5,6では石質岩片がそれぞれ,13 wt%,3 wt%,11 wt%である.
Unit 1~3では,共通して極細粒粒子 (-5φ)にピークが認められることから,マグマの水冷破砕により,細粒粒子が生成されたと考えられる.さらに,これらのユニットは淘汰が悪く,石質岩片を多く含むという特徴から,水蒸気を含んだ不安定な状態で,火道の開口が生じていたことが示唆される.Unit 4~6では,下位ユニットよりも分布が広くなり,石質岩片の量が減少することから,火道が安定し,高い噴煙柱を形成したと考えられる.Unit 6,7はKpⅠの体積の大部分を占めることから,噴火の最盛期であったと考えられる.Unit 7では,石質岩片の種類が明瞭に変化することから,カルデラ形成に関与した火口の拡大,あるいは移動が示唆される.その後,比較的小規模なUnit 8,9のフェーズを経てKpⅠの爆発的噴火は終息したと考えられる.
引用:勝井・佐藤,1963,5万分の1地質図幅「藻琴山」;長谷川ほか,2011.地質雑,117, 686 – 699;Hasegawa et al., 2016, JVGR, 321, 58 – 72 ; 奥村晃史,1991,第四紀研究,30,379-390 ; 奥村晃史 (1996) 第四紀露頭集,p.25.