日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS05] 大気化学

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.07

コンビーナ:中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院)、内田 里沙(一般財団法人 日本自動車研究所)

17:15 〜 18:30

[AAS05-P08] 国内オキシダント濃度と日最高気温との相関およびその長期変動

*清水 厚1、永島 達也1 (1.国立研究開発法人国立環境研究所)

キーワード:オキシダント、最高気温、気候罰則係数

[目的]地上オキシダント濃度の将来変動予測にあたり、エミッションの変化と同時に気候変動による気温上昇の影響を正しく評価する必要がある。1Kの気温上昇に伴うオキシダント濃度(ppb)上昇の割合を示す気候罰則係数(Climate Penalty Factor; CPF)について、過去の日本国内オキシダント濃度観測と気温観測とを利用して各年代における地域別の見積もりを行った。この結果と数値モデルにおける過去再現実験から導出されたCPFとの比較から、オキシダント濃度の温度依存性に関するモデルの再現性を確認し、将来予測の信頼性向上を図る。
[手法]地上オキシダント濃度は、1976年以降の大気環境常時監視局のデータ(1時間値)を利用して日最大8時間平均濃度を局ごとに求めた。気温データは都道府県を代表する気象台の日最高気温を利用した。まず各常時監視局で日最高8時間オキシダント濃度を定義し、このうち最高濃度が午前9時から午後9時に出現したデータについて県内平均を行う。この値と同県同日の日最高気温について月単位で線形にフィッティングしてその勾配をCPFとし、同時に相関係数も求める。数値モデルでは一次排出物質のインベントリにREASを利用したCMAQによる計算を1980/1990/2000/2010の各年について実施している。その際水平分解能は60kmおよび15kmの2ケースで計算を行った。
[結果]図に、1976年4月から2018年3月までの観測結果から得られた各都道府県におけるCPFを月毎にまとめたものを示す。横軸は総務省定義による北海道(1)から沖縄(47)までの都道府県コード、円の半径は日最高気温と日最大8時間オキシダント濃度との相関係数である。まず正のCPF(暖色)が大部分を占め、高気温と高濃度とが対応することが分かるが、寒候期(12-2月)には西日本で負のCPF(寒色)が見られる。ただしその傾向は1990年頃に比べて2010年以降弱まっているようである。また沖縄県では通年、鹿児島県でも6月から9月に掛けて負のCPFとなっており、南方海洋上から清浄・高温な気塊が到達する状況を示していると考えられる。これに対して正のCPFは6月から8月にかけての関東・近畿で大きく、都市域において高温時に高濃度のオキシダントが観測されることが示された。42年間の変動としては前記の西日本冬季における負のCPFが弱まっているように見える他は、トレンドよりも月・年単位での特異的な振る舞いが主で、1996年4月/2006年10月のプラス側への偏差、2000年7月や2012年9月のマイナス側への偏差が全国的に目立つ事例となっている。国内の前駆物質排出量や越境汚染がそのような単年/月で変動するとは考えにくく、これらの特異的変動は気象の影響と思われる。一方、モデル計算によるCPF(図は省略)では冬季の負の値は観測ほど目立たないが、1990年6月や2000年7月には広い範囲で負の値が見られた。またCPFは水平分解能にも依存し、60kmグリッドでは国内でのばらつきが目立つが15kmグリッドではそれが小さくなることが分かった。
[謝辞]過去の国内オキシダント濃度データは国環研-地環研II型共同研究の枠組みで収集されたものを利用しました。