日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS07] スーパーコンピュータを用いた気象・気候・環境科学

2021年6月4日(金) 10:45 〜 12:15 Ch.07 (Zoom会場07)

コンビーナ:八代 尚(国立研究開発法人国立環境研究所)、川畑 拓矢(気象研究所)、宮川 知己(東京大学 大気海洋研究所)、寺崎 康児(理化学研究所計算科学研究センター)、座長:川畑 拓矢(気象研究所)

11:15 〜 11:30

[AAS07-09] 深層学習による降雨洪水氾濫モデル・エミュレータ

*桃井 裕広1、小槻 峻司2、菊地 亮太3、渡部 哲史4、山田 真史5、阿部 紫織6、綿貫 翔7 (1.DoerResearch株式会社、2.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、3.京都大学産官学連携本部、4.東京大学大学院工学系研究科、5.京都大学防災研究所、6.三井共同建設コンサルタント株式会社、7.株式会社 建設環境研究所)

キーワード:d4PDF、降雨流出氾濫モデル、エミュレータ、深層学習

近年、極端気象の増加による洪水災害が増加しており、災害対策には降雨イベントに対する浸水の空間分布が重要である。しかし、降雨流出氾濫モデル(佐山ら2014;以下、RRI)などの物理方程式に基づく水工・水理モデルは計算コストが高く、計算時間を要する。そこで本研究では、実行計算コストの軽微な深層学習を用いて降雨流出氾濫モデルのエミュレータ(以下、Rain2Surface)を開発した。今回の実験では秋田県雄物川流域を対象とし、降雨の空間・時間分布から降水イベントの最大浸水深を予測するエミュレータを構築した。また、入力には気象・気候分野で進められている大アンサンブル予測データ(d4PDF)の30年50アンサンブルから、各年の年最大30時間降水量を含む7日間を使用し、出力はRRIを用いて計算した最大浸水深分布とした。

Rain2Surfaceには深層畳み込みニューラルネットワークを使用した。入力データはアメダス観測点でバイアス補正した13地点における168時間の時系列データであり、出力データは最大浸水深の二次元分布である。Rain2Surfaceでは、入力となるアメダス降水量から一次元のConvolution層と全結合層で特徴量を抽出し、二次元のTranspose Convolution層により特徴量から二次元の最大浸水深分布を生成する。

最大浸水深の深い地点(以下、A点)について、Rain2Surfaceの予測精度は二乗平均平方根誤差(RMSE)が20 cm, 決定係数(γ)が0.93であった。A点に対して回帰学習器のアンサンブル学習させた場合(RMSE=29 cm、γ=0.89;小槻ら2020)よりも精度が向上した。これは、深層畳み込みニューラルネットワークによる非線形性に由来していると考えられる。さらに、アンサンブル学習をさせた回帰学習器(小槻ら2020)では、対象地点(A点)のみを予測するモデルであるが、今回構築したRain2Surfaceは2次元分布が出力可能であることを確認した。