日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC25] ニューノーマルの雪氷学

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.04

コンビーナ:永井 裕人(早稲田大学 教育学部)、舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、石川 守(北海道大学)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

17:15 〜 18:30

[ACC25-P03] 新潟県長岡市における埋雪SAR電波反射鏡の設置観測結果速報(2020/2021冬季)

*永井 裕人1,2、砂子 宗次朗2、山下 克也2、山口 悟2 (1.早稲田大学 教育学部、2.防災科学技術研究所)

キーワード:合成開口レーダー、積雪深、異常気象、PALSAR-2

広域の積雪深分布把握は、雪氷防災の基礎的な情報となる。特に降雪量の多い山間地域では地形が急峻であるため、地上観測点数が限られており、更なる観測システムの整備が期待される。このような地域を対象として、広域かつ詳細な積雪深分布を把握するためには、地球観測衛星に搭載された合成開口レーダー(SAR)が一つの手段となりうる。積雪があると、SARが送受信するマイクロ波の後方散乱が弱くなる。これは積雪の表面・内部でも反射・散乱が生じるためであり、その強さは積雪の深さと物性(含水率)に依存すると考えられる。
 本研究では、積雪深空間分布把握の精度向上に貢献するため、金属製の電波反射鏡(CR: Corner Reflector)を実際の雪に埋没させ、合成開口レーダーの反射強度が積雪深にどのように対応するかを調べる。周囲よりも強いシグナルであることを利用して、従来よりも詳細かつ低ノイズでマイクロ波の伝搬過程を把握することを狙いとする。
 作成したCRは1辺1 mの正方形を3枚組んだ立方体型であり、ステンレス製に加えて、2 m以上の深さの積雪加重にも耐えられるように鋼鉄製のものも用意した。ステンレス製CRは防災科学技術研究所・雪氷防災研究センターの敷地内(長岡)に2基(西向き1・東向き1)、鋼鉄製CRは同センター管理の気象観測点(栃尾田代)に4基(西向き隣接2、東向き1、東向き樹木障害あり1)を2019年11月に設置した。またこれらの埋雪状態をリアルタイムに把握できるよう、野外インターバルカメラを設置し、30分または1時間ごとの撮影画像の遠隔伝送システムを2020年12月から稼働させた。
 2020年から2021年にかけては、新潟周辺において2021年12月14日ごろから短時間に著しい降雪が生じ、高速道路で車数百台が長時間立ち往生するなど社会的混乱が生じた。CR撮影画像でも急な積雪深の増加を捉えており、長岡ではこの頃から50 cm以上、栃尾田代では1-3 mの積雪が維持されていることが確認された。両地点では定常的な自動積雪深計測が実施されているが、積雪深は周囲で完全に均一ではなく、日陰や地物、風向きによって若干の偏りが生じる。CRのような熱伝導性の高い物体があると、そこだけ周囲と積雪深が異なってくる場合もある。特に長岡においてはCRが完全に隠れる1 m前後での積雪深の増減が生じていて、CRが完全に埋雪しているか一部が露出しているかは後々の解析で重要な情報であり、カメラからの画像はもっとも確実に状況把握できるデータである。
 CRの積雪状態を記録している間、欧州宇宙機関のSentinel-1a/b衛星は複数基・複数軌道での観測を実施しており、12日間に3回の観測データが蓄積されている。また日本の陸域観測技術衛星「だいち2号」は高分解能モードで2月に2回の観測を実施する予定である。本発表ではこれらの衛星観測データとCR埋雪状態を解析し、得られた結果を速報する。