日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG38] 海洋と大気の波動・渦・循環の力学

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.10 (Zoom会場10)

コンビーナ:田中 祐希(福井県立大学 海洋生物資源学部)、青木 邦弘(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久木 幸治(琉球大学)、杉本 憲彦(慶應義塾大学 法学部 日吉物理学教室)、座長:青木 邦弘(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、久木 幸治(琉球大学)、田中 祐希(福井県立大学 海洋生物資源学部)

11:00 〜 11:15

[ACG38-02] 渦解像モデルで再現された20世紀の日本沿岸の海面水位の長期変動

*中野 英之1、浦川 昇吾1、坂本 圭1、豊田 隆寛1、山中 吾郎1 (1.気象研究所)

キーワード:沿岸水位、黒潮/黒潮続流、渦解像モデル

20世紀の日本沿岸の長期的な海面水位変動は、1950年代をピークに1980年代に減少し、1980年代以降は一貫した上昇傾向を示す数十年スケールの変動に特徴づけられる。また、10年から20年程度の周期の弱い海面水位変動も存在する。これらの沿岸海面水位変動のメカニズムを解明するために、20世紀の複数の再解析データを用いて黒潮・黒潮続流および沿岸補足波を再現できる水平解像度が約1/10度の海洋大循環モデルを駆動した。これは、20世紀全体の再解析データに解像度が1/10程度の海洋モデルを適用した初めての試みである。さらに、沿岸においては沿岸捕捉波による調整の効果が重要であるため、沿岸捕捉波に関する理想的な実験も行った。海洋モデルはブシネスク近似に基づいているが、海水の熱膨張による海面上昇はその局所的な寄与が世界中に急速に広がっているため、全球平均で診断することができる。この世界平均の海面上昇は、1980年代以降、沿岸水位の上昇に大きく寄与している。1980年代以前の長周期変動は、1950年代でピークを迎え1980年代に減少するというシグナルが卓越する。これに関しては熱膨張の寄与は小さく、風応力および黒潮・黒潮続流の変動の影響が強かった。特に1950年代の高い沿岸水位は北海道と本州の日本海側で同程度の振幅を持つが、これには太平洋中央部で励起された高水位偏差の北海道東方への到達および沿岸捕捉波による調整が重要であったことがわかった。この太平洋の高水位偏差は黒潮続流の北進ももたらし、これが引き起こす沿岸捕捉波も本州南岸のより大きな沿岸水位変動に関連していた。1980年代以降は、熱膨張の寄与を除けば、北海道の水位変動は本州の水位変動よりも小さく、日本付近の海面変動は黒潮の経路変動に大きく関連していたことを示唆する。