日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG39] 北極域の科学

2021年6月4日(金) 17:15 〜 18:30 Ch.08

コンビーナ:中村 哲(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、小野 純(海洋研究開発機構)、島田 利元(宇宙航空研究開発機構)、両角 友喜(北海道大学 大学院農学研究院)

17:15 〜 18:30

[ACG39-P03] シベリアの寒冷化に伴う海陸コントラストがもたらす初冬の極夜ジェットの弱化

*安藤 雄太1,2、山崎 孝治3、立花 義裕2、小木 雅世3、浮田 甚郎1 (1.新潟大学 理学部、2.三重大学 大学院生物資源学研究科、3.北海道大学)

キーワード:成層圏、ロスビー波、海陸コントラスト、年々変動

冬季北半球では高緯度の成層圏は強い西風(極夜ジェット)が特徴的である.季節内変動の時間スケールでは,極夜ジェットのシグナルは上部から下部成層圏へ下向き伝播する.この変動は北極振動と関連するため,極夜ジェットは成層圏だけでなく対流圏の気候にも重要な役割を果たす.気候値の極夜ジェットは,風速が10~12月に単調増加し1月前半に最大に達する.その後単調減少する.しかし,日平均データで見ると11月(2月)後半に一時的に増加(減少)が止まる.この現象を本研究では季節進行の「停滞」と呼ぶ.2月後半の停滞は成層圏突然昇温(SSW)の発生が1月より少なくなることと関連すると考えられるが,SSWが少ない11月後半は知られていない.Ando et al. (2018) ではこれを力学的な視点で調べた.11月後半はシベリア域と大西洋の海陸コントラストが大きくなるため,シベリア域でトラフが発達し,ロスビー波束の上向き伝播が急増して下部成層圏で収束することが季節進行の停滞と関連していることを示した.ただし,その年々変動について詳細には述べられていない.この本研究は極夜ジェットの11月後半における季節進行の停滞が顕著な年の特徴を調べることで停滞の要因を考察することを目的とする.高緯度の100hPaのEPフラックスの鉛直成分を見ると,停滞する年の方がしない年より11月後半に急増し下部成層圏で収束した.停滞する年の方が11月後半の停滞が明確である.これは停滞する年の方がEPフラックスの鉛直成分が11月後半に急増する傾向が明確であることと整合的である.このプラネタリー波の源を調べるため,100hPa波活動度フラックスの鉛直成分を見ると,11月後半にシベリア域で正の値であった.停滞しない年はシベリア域の狭い範囲のみだったが,停滞する年はシベリア域の広い範囲であった.シベリア域では近年が北風・低温偏差であるため,停滞する年はトラフの強化がプラネタリー波伝播の急増と関連することが示唆された.500hPaジオポテンシャル高度の帯状平均からの偏差を見ると,停滞する年はシベリア域でトラフが形成されることが明らかとなった.プラネタリー波に関連した対流圏下層の気温を見るため,850hPa気温のシベリア域とそれ以外の地域の領域平均した指数の時系列を作成した.11月後半にその差が最大に達するが,停滞する年の方がその差と下がり方が大きかった.以上の結果から,海陸の熱的コントラストがプラネタリー波を形成し,極夜ジェット停滞を引き起こしたことを示唆した.さらに,停滞する年の方が海陸コントラストが大きいため,これが極夜ジェット停滞に影響を与えていることを示唆した.