日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS14] 沿岸域における混合,渦,内部波に関わる諸現象

2021年6月5日(土) 15:30 〜 17:00 Ch.09 (Zoom会場09)

コンビーナ:堤 英輔(東京大学大気海洋研究所)、増永 英治(Ibaraki University)、永井 平(東京大学理学系研究科)、座長:堤 英輔(東京大学大気海洋研究所)、増永 英治(Ibaraki University)、永井 平(東京大学理学系研究科)

16:15 〜 16:30

[AOS14-04] 大槌湾口における潮汐および慣性周期変動の振幅変調

*孫 統鈞3,1、伊藤 幸彦3、堤 英輔3、石津 美穂2、田中 潔3 (1.東京大学農学生命科学研究科、2.海洋研究開発機構、3.東京大学大気海洋研究所)


キーワード:大槌湾、潮汐、内部波、沿岸捕捉波、大潮

三陸沿岸域では、様々な海流や波動が狭い陸棚上で活発に相互作用し、湾内外の海水交換に大きな影響を与えていると考えられている。内部波と沿岸捕捉波を分ける慣性周期は、三陸中部の大槌湾においては約18.9時間であり、日周潮周波数は慣性周波数以下(ωf)である。このため、湾外水の湾内への流入出には、沿岸捕捉波、自由伝播型の内部波およびこれらの相互作用が影響すると考えられる。本研究では、大槌湾口南北2点における係留系観測(2012–2016)により潮汐由来の内部波と沿岸捕捉波の実態を明らかにし、沿岸と沖合の海水交換過程を解明することを目的とする。大槌湾口北側、南側の双方において流速の半日と日周成分は夏季に強化され、特に日周に比べ半日周成分が強かった。対照的に、冬季には半日と日周成分は同程度の流速であったが、振幅は夏季の1/5程度だった。南北の観測データが揃っている2013年7–10月に着目すると、長周期背景流(周期が40時間以上)が湾口北から流入し、湾口南から流出していた。大潮は基本的には1か月に2回出現し約半月周期を持っているが、2013年7–10月には、半日と日周成分流速は大潮周期(約半月)よりも短く振幅は不規則に変動していた。この要因を解析するため、大槌湾近くの釜石験潮所の潮位時系列に調和解析を行い半日と日周潮を抽出し、係留系の流速変動と比較した。この期間中の潮位は、半日周潮が日周潮より支配的であった。7月上旬には半日と日周潮の極大が同時に出現したが、8月以降には極大のタイミングが徐々に離れ、その後10月下旬以降に再び近づいて同時出現になった。一方、2013年2–5月には、潮位においては大潮小潮周期変動と極大のタイミング遷移が認められたものの、流速の振幅は非常に小さくタイミングの差は不明瞭であった。

  これらの現象はローカルな潮汐変動のみでは説明できず、半日と日周潮の相互作用、遠方からの波動伝播、長周期背景流の影響、密度成層変化の影響等が考えられた。