日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS18] 黒潮大蛇行

2021年6月3日(木) 15:30 〜 17:00 Ch.07 (Zoom会場07)

コンビーナ:美山 透(国立研究開発法人海洋研究開発機構・アプリケーションラボ)、碓氷 典久(気象研究所)、平田 英隆(立正大学)、瀬藤 聡(国立研究開発法人水産研究・教育機構)、座長:平田 英隆(立正大学)、瀬藤 聡(国立研究開発法人水産研究・教育機構)

16:00 〜 16:15

[AOS18-03] 最近の持続する黒潮大蛇行が亜熱帯モード水に与える影響。パート2:四国沖再循環における形成と時間発展

*西川 はつみ1、杉本 周作2、岡 英太郎1 (1.東京大学 大気海洋研究所、2.東北大学 大学院理学研究科)

キーワード:亜熱帯モード水、黒潮大蛇行、四国沖再循環

2017年8月から始まった黒潮大蛇行は現在も継続し,40年ぶりに3年以上持続している。黒潮が蛇行流路(大蛇行流路ならびに非大蛇行離岸流路)をとるとき,四国沖の黒潮再循環では19℃を超える温かい亜熱帯モード水(STMW)が形成され,1年以上前に形成された冷たいSTMWと2層構造をつくることが知られているが(Sugimoto and Hanawa, 2014),先行研究が対象とした蛇行期間はいずれも1年程度である。本研究では,複数年にわたり持続する大蛇行が四国沖再循環におけるSTMWの形成と時間発展に与える影響を,アルゴフロート、衛星海面高度計、および船舶観測のデータから調べた。

大蛇行開始前の2017年春,再循環内では2017年晩冬に形成されたと考えられる厚さ400m,水温18℃のSTMWが100~500m深で1層構造を成していた。大蛇行開始後の2018年晩冬には19℃を超える温かいSTMWが深さ300mまで形成される一方,前年に形成されたSTMWは350~650m深に移動し,2層構造が形成された。上層の温かいSTMWは,2019年晩冬には混合層が浅かったために更新されず,2年近く持続し,その後2020年晩冬の混合層発達により更新された。2017年に形成された下層のSTMWは厚さが200mほどまで縮小したものの2020年まで生き残り,温かいSTMWとの2層構造が持続した。

2018年6月に再循環の中心付近で得られた気象庁の船舶観測によるCTDO2プロファイルは,STMWの2層構造をきれいに捉えていた。それぞれの層の渦位極小におけるAOU(見かけの酸素消費量)は浅い方(深さ236m)が0.2560ml/l,深い方(545m)が0.4229ml/lで,その差から見積もられる酸素消費速度は0.1669ml/l/yrと,先行研究の値に比べて非常に小さいものとなった。これは,2017年につくられたSTMWが酸素消費の遅い深度に移動したことに加え,再循環内に閉じ込められ隔離されたSTMWが受ける拡散が非常に小さいためと考えられる。